本棚の中に白いカバーの本が並ぶ。その前で白いシャツを着た外国人女性が本を読んでいる。そんな表紙とタイトル、そして著者に誘われて買った。ずっと積んでおいて、読み始めてだいぶ止まって、再び読み始めて、途中をずいぶん飛ばして最後のページへと辿り着く。本棚に並べたり、横に置いて飾っておきたい本である。ただ、まだ僕がこの本を読む時期ではないのかもしれない。
著者は批評家であると同時に写真家でもある。僕は最初、写真家として著者を知った。『文字の母たち』(港千尋/インスクリプト)を買ったのが4年前。「いまや絶えようとする活版金属活字の最後の姿をとらえ、文字の伝播の歴史を繙く写真集」と帯にある。本や活字のもとのモノクロ写真が載っている。ところどころにカラー写真もある。この写真集が僕が持つ著者のイメージである。
ちゃんと読まないけれど気になる著者。僕にとっては珍しいタイプである。『まっくらな中での対話』(茂木健一郎 with ダイアログ・イン・ザ・ダーク/講談社文庫)の中で、茂木さんが「港千尋さんの本の中に盲目の写真家の話が出てきて面白い」と紹介していた。それでこの本がそうじゃないかと探したけれどそういう記述は見つからず、では別の著書だと一時期本屋を探してみたりしたのだが、まだそういう本に辿り着けていない。きっとこの著者とは、ずっとそういう距離感のような気がする。
(ことしの本棚 第48回 針谷和昌)
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