インディペンデントなファンドマネージャー(※1)と風(※2)の女の不倫純愛物語、と書くと身も蓋もないだろうか。著者十数年振りの恋愛小説、泣かされた。交わされる何通ものメールが、物語をナビゲートしている。風の女から送られて来る短い文章を、主人公が読み込みながら、物語は進んでいく。最初に結果が出て来て、最後に再びそこに辿り着く。長い物語だが、飽きさせない。毎晩、少しずつ寝る前に読んだ。
※1:主人公の職業は僕の良く知らない世界なので果たしてこの説明で合っているのか?自信ありません
※2:風とは風俗のことを言うそうですが、これはこの小説の中でそういう説明があります
先日、若い友人と震災の話になり、僕が(このブログでも紹介した)村上龍のNYタイムズへの寄稿文「危機的状況の中の希望」について触れると、友人は「読みました。ホテルの部屋でブランデーを持って机の下に逃げるなんて、この年齢でも格好つけているなぁ、って思いましたよ。そこがいいところですけれどね」と言った。肯定しているのか否定しているのか、ちょっと微妙な表現。
他にも僕と話は普段合うけれど村上龍については肯定的ではない友人もいて、意外と無邪気に村上龍ファンを公言できない環境が僕の周りにはある。ただ、村上龍の小説はだいたい読んでいるし、期待はずれの作品の記憶がない。最近では、電子書籍で出た『歌うクジラ』(講談社/電子版:グリオ)はまだ読んでいない。せっかくなら、電子版で読みたい気もしてきた。
(ことしの本棚 第44回 針谷和昌)
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