「本」に関する本は数あれど、なかなか読み切ることが出来ない場合が多いので、もうあまり買わないでおこうと思っていた。ところが「本を愛する手から愛する手へ 本は現場にまかせろ―という声が聞こえる 椎名誠」という帯に誘われてというか、あろうことか椎名誠が書いた本だと勘違いして、買った。そういうスタート時での躓きもなんのその、珍しく読破、いろいろな新しい発想のヒントにもなった。
(社)本の宇宙のおおもとになったある提言というか企画では、知的環境を創造する未来の図書館を創ることを目標とした。その図書館には本屋もある。だから本屋が実際、今どうなっているかは知っておかなければいけないこと。そして僕らが考えていた、本の並びの魅力、コーナーづくりの魅力で引っ張る方法は、いろいろな書店で既にやっていることがよくわかった。それが上手くいっている本屋が、人気がある本屋なのである。
だから僕らの発想は間違っていなかったし、もう既にやっているとわかっても、読んでいるうちに新たなアイデアが浮かび、それは世界にないものであると確信が持てるようになった。そのアイデアは…すみません、まだ企業秘密。
さて、この本に出てくる12人の書店人は、写真も出ているのだが皆、優しい顔をしている。そういえば僕の知っている書店員も、皆優しい顔だ。これはひとつの発見である。本は人を優しくするのか、優しい人が本を扱う職業に就くのか。それでいて、継続する力を持っている。だから静かに、熱い人たち、なのではないだろうか。
この本で、とくにここに記しておきたいことは、以下である。
・2001年に20,939軒あった本屋が、2009年には15,610軒に減って、現在も減り続けている。
・小さな書店には注文しても本が来なくて、町の小さな書店には1冊も割り当てられないことも珍しくない。
・1冊の本から他の本へと棚を関連づけて構成していく方法を「文脈棚」といって、往来堂書店が始めた。
・取次から書店への配本を一定のパターンに当てはめて行う仕組みを「パターン配本」と言い、欲しい本が欲しい部数で書店に届く仕組みを「指定配本」と言う。
・2009年3月時点で、出版社数は4,000弱で、こちらも減り続けている。
・取次手数料は定価の7-8%、取次数は100社以上、日本出版取次協会加盟はそのうち30社、日販とトーハンで全体の7割以上の流通を扱う。
・書店の利益は22-23%、売れ残った本の代金はまるまる返金(仕入れ価格=本体価格の77-78%)。
・通常、著者8-10%、版元35-37%、印刷所25%、取次8%、書店22%。
・35ブックス(筑摩書房ほか8社)では、版元22-24%、書店35%(返品の引取額が従来の半分)。
・書店ではPOPが重要、「POP王」。
・棚の作り方を「棚編集」という。
・子供の時から本を読む楽しみとは無縁の生活を送りそのまま大人になった人が急激に増え、本を買う時の保証が欲しいのではないか。それを教えてくれるのが「POP王」であり「本屋大賞」。
・「書籍は知の商材です」「書店員は(中略)『知』と『知』をつなぐ文脈も理解できる」「(前略)知見(後略)」小城武彦(丸善社長 CHIグループ社長)
(ことしの本棚 第42回 針谷和昌)
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