通っていた小学校はA~Eの5段階評価で、とくにAがたくさんあった訳ではない僕が、6年間18学期、ずっとAだった科目が美術だった(惜しかったのは体育が2年生のとき1度だけBであとは全部Aだったこと)。まぁ、いわゆる勉強ではなく絵と運動が出来た子供だったということである。
その時代を知っている小学校の時の担任の先生は、僕が美術が得意で当然そのジャンルのことを詳しいと思っていて、つい数年前、僕が何かを発表するなら美術についてやってみたら?とアドバイスをくれた。ところが僕は美術についてまったく知らない。
そんな訳でいつか美術のことを学びたいなと思っていたところ、先日とある美術家と知り合って、絵の話になった。この人と話をするにはもっと詳しくならなければと思い、以前から気になっていたこの本を読んだ。これまで村上隆の本はビートたけしとの対談を読んだだけだ(『ツーアート』(ビートたけし 村上隆/ぴあ))。
結論から言うと、とても刺激的な本であると同時に、僕の理解力不足で人に説明するほどまで内容を把握していない。把握しきれなかっただけに、気になるところを書き留めておかなければと思う。
・第2次世界大戦に勝った英米がパリ(仏)から芸術の覇権をロンドンとニューヨークに移動させた(ポップアート→ミニマルアート→ランドスケープアート)
・鑑賞の4要素=構図・圧力・コンテクスト・個性
・ピカソ、マティス、デュシャン=描くことを拒否すること
・絵を売る世界では緑色の絵も茶色の絵も売れない、赤色の絵は売れる
・ギャラリーの趣味が良くても自分と人間的に合わなければ悲劇
・作家になりたければ私小説っぽさはぜんぶ忘れ、自分の中の核心部を発見して一点突破する
・西欧における現代美術のコンテクスト=自画像・エロス・死・フォーマリズム(歴史)・時事
・勝負の分かれ目=文脈の説明・理解者の創造・ネットワーク
5年ぐらい前だろうか。突然、絵を描きまくったことがある。ほとんど毎日描いて、家に飾ったりというのは良いとして、迷惑だったかもしれないが友人にあげたりビーチバレーのTシャツにしたりした。友人が会社を創った記念に会社のイメージをイラストにしてプレゼントしたら、優しい友人は会社のホームページに載せてくれている。
それからしばらくしてすっかり通常に戻り、いまは絵を描いても年に1枚ペースだった。絵を描くときは何か心の底から描きたいという欲求が猛烈に浮かび上がってくる。村上隆の本はその欲求に、ちょっとだけ火をつけたかもしれない。まだ燻っている程度だが。
(ことしの本棚 第35回 針谷和昌)
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