ことしの本棚28『長嶋的、野村的』

『ブタとおっちゃん』と共に、『長嶋的、野村的』(青島健太/PHP新書)を買ってきた。「ゾーン」の章があったのと、しかもそこに「斎藤佑樹」のことが書いてあったからだ。ゾーンは僕の研究テーマのひとつだし、僕は斎藤佑樹ファンである。
 

 
『長嶋的、野村的』の著者の青島健太さんは、仕事で知り合った。知り合ったのが何の仕事だったが忘れてしまったが、その後とある仕事で後輩からのインタビューをお願いし、快く応じてくれた。しかもその内容がとても印象的だった。
 
「スポーツの超一流選手は、そのスポーツは自分のもの、という意識が最も強い人」という話をしてくれた。本人も元プロ野球選手だから一流のスポーツマンなのだが、一流と超一流の違いをこう表現した人は初めてだと思う。
 
さて、『長嶋的、野村的』には斎藤佑樹の「仲間」発言も出ていて、しかも「相手の慶應大学を含めての仲間」というところをクローズアップしている。これ、僕もブログに書いたな、と思ったが、どこに書いたか忘れていたのでいろいろ調べてみたら、それは匿名ブログだったことがわかった。青島さんに刺激を受けて、今回それを引っ張りだしてみた。去年の11/4に掲載している。
 
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「仲間」
 
早慶戦での優勝決定戦は50年振り、六大学での優勝決定戦も20年振
りという、早稲田×慶應のサドンデス(延長制限なし)の1戦を見て
来た。
 
快晴、ほとんど無風、これ以上ない野球日和というのが神宮球場へ
行った第一の理由。もうひとつ大きかったのは、今朝の新聞で「50
年振りはもちろんすごいですけれど、早慶戦がまた長くできるとい
う意味では、幸せなこと」という早大・斎藤佑樹投手の言葉に触発
されたことも大きい。「野球が長くできることが嬉しい」なんて、
この人わかってるな、と。そういう選手の大学最後の試合は見逃せ
ない、と思った。
 
もともとこの日には自分の野球の試合の予定が入っていた。出身校
のOB戦なのだが、仕事が絶対に入ると思って僕は欠席で返事をし
て、そういう人が多かったのか、今回は両チームメンバー不足で延
期になってしまった。そして入る筈の仕事がポッカリ空いて、運良
くこの決定戦に行けることになった訳である。仕事の神様が「いっ
てこい」、野球の神様が「いらっしゃい」と言ったかどうかは知ら
ないが、この試合に立ち会えたことは、幸運以外の何ものでもない。
 
「いい試合でした。慶應は渕上、早稲田は市丸と松本、そしてなん
と言っても斎藤が良かった」
 
来れなかった友人にそうメールしたけれど、早稲田の2番市丸はヒ
ットを量産。何よりも“2番キャッチャー”という打順がなかなか珍
しくて興味を持った。早稲田のショート松本は、慶應渕上の三遊間
の当たりに横っ飛びで追いつき、起ちあがりざま矢のような送球で
アウトにした。このファインプレーが大きく、斎藤投手は8回1死
までノーヒットノーラン。
 
先頭打者をエラーで出塁させたがアウトを取って、「あと5人」を
数えたところで再びエラーが出た。流れが慶應に傾き、ノーヒット
が破られる。そして斎藤投手は立て続けに打たれ、5安打5失点。
この回まで7―0、このまま完勝のノーヒットノーランか?という
雰囲気の中、慶應が奮起して2点差まで攻め寄った8回裏だった。
結局ダメ押しの3点を9回表に挙げた早稲田が10―5で勝って優
勝した。
 

 
優勝インタビューで斎藤投手はこんなことを言った。「ちょっと今
日は言っていいですか。斎藤は何かを持っている、と言われること
がありますが、それが何だか今日わかりました。仲間です」…一字
一句こうだったかは自信がないが、ニュアンスには間違いないだろ
う。そして、その“仲間”には、相手でライバルの慶應も入っている
という意味のコメントが続いた。
 
この人、本当にわかってる人だなぁ…これらのコメントを大型ビジ
ョンを通して聞きながら、僕の中から熱いものがこみ上げてきた…。
プロ野球で彼がどうなるかは、わからない。上手くいくかもしれな
いし、そうでないかもしれない。どうなろうが、僕はずっと彼を追
っ掛けていこうと、神宮の外野席で思った。

 
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斎藤佑樹のコメントのフルバージョンは、TV番組で確認してから別のブログに書いた。「ゾーン」の話は、何か適切な本に巡り会ったら、そのとき書いてみたい。

 
ことしの本棚 第28回 針谷和昌)

hariya  2011年3月22日|ブログ