本が少しずつ、読めるようになってきた。震災直後は本を読むという発想も出てこないし、しばらくして読もうと本を開いても、すぐにTVから流れてくる情報に耳を傾け、そしてそのうち本を閉じ、TVの前に移動した。そしてずっとTVを見ていた。それがようやく、少しずつ本にも集中できるようになってきた。
毎週日曜日の新聞には「読書」のコーナーがあって、3/20の朝日新聞『本の舞台裏』では、「こんなとき開くなら」という震災後のいま開く本について何人かのお薦めを紹介している。
姜尚中(東大教授)
・『パンセ』(パスカル/中公文庫等)
・『それでも人生にイエスと言う』(V・E・フランクル/春秋社)
横尾忠則(美術家)
・『新訳 菜根譚』(守屋洋/PHP新書)
斎藤環(精神科医)
・『心の傷を癒すということ』(安克昌/角川スフィア文庫/品切れ)
種村弘(歌人)
・『東のエデン』(杉浦日向子/ちくま文庫)
被災地では本も不足しているだろう。(社)本の宇宙 としては、本を集め、本が必要なところに送る手だてを、考えておこうと思う。今はまだそうでもないかもしれないが、本を求める声があがってくる日が、近いうちにやってくると思う。
現在、複数の本を同時並行で読むペースが少しずつ戻ってきたけれども、先ず最初に僕が読み始めたのはこの本だった。
『ぼくの生物学講義 人間を知る手がかり』(日髙敏隆/昭和堂)
この本には、人間の生物としての不思議がたくさんつまっている。当たり前だと思っていたことが、当たり前でないということに気づかせてくれる。余計なものを取り除いて物事を見つめると、分からないことがたくさんあるということを教えてくれる。
「こんなとき開くなら」僕はこの本をお薦めする。
(ことしの本棚 第26回 針谷和昌)
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