大震災のせいか、落ち着いて本を読むことができない。地震が起きてからずっとTVを見ている。僕はふだん殆んどTVを見ないので、大げさに言えばもう1年分ぐらい見ているように思う。そんなとき、パソコンの横、机の上に積んである本群の中から、偶然この本を引っ張り出した。
『小惑星探査機はやぶさ』(川口淳一郎/中公新書)
ほんのさわりだけ読んである本。ビジュアル版というか、カラー写真が多く、眺めているだけでも引き込まれる。もともと渋谷に新しく出来たプラネタリウムのオープニングプログラムとして取り上げられていたのが「はやぶさ」。その映像で分からないことが多かったので、本でいろいろ知りたいなと思っていたのだが、いまは心にその余裕がまだない。
中をパラパラめくってみると、「はやぶさ」が探査した「イトカワ」は見れば見るほどピーナツのよう。その「イトカワ」にはたくさん地名がつけられていて、それが結構おもしろい。
サンマルコ/ガンド/ハマグイラ/オオスミ/カモイ/サガミハラ/フチノベ/アルコーナ/ローレル/コマバ/カミスナガワ/リニア/ミューゼス・シー/ウチノウラ/カタリナ
一部を除いてみんな漢字変換が出来る。超日本的な地名が並ぶ。それから感激するのは「天の川に向かって輝く『はやぶさ』とカプセル」というキャプションのついた縦型の1頁写真。宇宙を飛ぶ「はやぶさ」の勇姿である。
人間は宇宙を60億キロメートルも旅してサンプルを持って帰ってくる探査機を飛ばせるようになった。一方で自然の大きな力にはまったく無力である。ちゃんと読んでみないと分からないが、その無力さを充分に自覚して知性と技術を結集したからこそ、「はやぶさ」の成功があったのではないか。心が落ち着いたら、じっくり読んでみたい。
(ことしの本棚 第23回 針谷和昌)
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