あっと言う間に『信頼する力 —ジャパン躍進の真実と課題』(遠藤保仁/角川oneテーマ21)を読み終える。前回「運動量の豊富さで勝負せず、明らかに頭と技で戦っているように見え る」と遠藤選手のことを書いたが、失礼致しました遠藤さん。カメルーン戦(2010ワールドカップ日本代表第1戦)ではその日にあった全試合の全出場選手 中、2番目に走っていた(走行距離2位)のが遠藤選手だそうで、頭ももちろん、体もたくさん使う選手であった訳です。おみそれ致しました。そして、これもイメージと違ったのだが、遠藤選手の筆致は切れ味鋭い。
大会前まではあまり盛り上がってなかったこと。直前のコートジボアール戦で、戦える選手と戦えない選手が明確になったこと。日本代表は個々がリーダーの自覚を持ち、それがこのチームの最大の特徴だったこと。カメルーン戦ではブブゼラでベンチの声が全く聞こえなかったこと。どれだけ選手が自分とチームを信じてプレー出来るか、それが揺るがなければ大丈夫であること。サッカーの試合では理想と現実の折り合いに割り切れない思いを抱いたままプレーするケースが多いということ。対戦順に恵まれて理想的な展開に持ち込めたこと。高地対策が完璧だったこと。現在所属するガンバの監督になれるなら今すぐにでもなって優勝させる自信があること。…まだまだあってすべて書いたらかなりの量になるので、取りあえずこれくらいにしておく。
現役の選手で自分が所属するチームの監督をやったら優勝する、と宣言できる選手はなかなかいない。役者が監督を馘首にして自分で映画を撮った、という話がどこかにあった気がするが、それと同じようなことがサッカーでも起こったら、と想像(妄想?)が膨らむ。
30歳を過ぎていても海外への飛躍も視野に入れているし、指導者になってからも注目していくべきアスリートであるということがよくわかる。もっと選手としてのプレーを見て行きたいし、早く監督としての采配も見てみたい。ファンをそういうジレンマに陥れる希有なフットボーラーである。
(ことしの本棚 第4回 針谷和昌)
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