『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』
(ウンベルト・エーコ, ジャン=クロード・カリエール/工藤妙子 訳/阪急コミュニケーションズ)
本屋で平積みを見た瞬間に、一目惚れ。すぐ手に取ってレジへ。表紙の重厚さ、天と小口と地(というのだそうだが、紙が重なっている部分の上が天、背表紙と反対側が小口、そして下が地)の真っ青な色、そして「紙の本は、電子書籍に駆逐されてしまうのか?」という帯の文句、さらにはウンベルト・エーコという著者名…それらすべてが、この本の魅力として僕に迫ってきた。あらためて本というものが、ひとつの商品であり、その中で優れたものは芸術品と言っても差し支えない気がしてくる。
表紙の表情だけではわからない、その雰囲気をお伝えしようと2つのアングルから写真を撮ってみた。1枚目は表紙のデザインとしての優れた部分、2枚目は本としての読む期待感をあおる厚さと、小口と地の真っ青な色。この本を机の上にポンと置いておくだけで、なんだか知性が漂ってきそうな気がする。
内容については…いま読んでます。ウンベルト・エーコ(イタリアの中世学者、記号学者、哲学者、文芸評論家、小説家=代表作『薔薇の名前』)が 1932年、ジャン=クロード・カリエール(フランスの作家、劇作家、脚本家=代表作『ブリキの太鼓』『存在の耐えられない軽さ』)が1931年生まれなので、ほぼ80歳の2人の対談(引き出し役としてもう1人、1958年フランス生まれのジャン=フィリップ・ド・トナックというエッセイスト、ジャーナリストが加わっている)。その2人が十二分に電子書籍の特徴を把握しながら、本について話し合っているのが、まだ全体の1/10を読んだだけでもわかる。
僕の心の中にはいま「本の本棚」というものがあって、いずれ皆さんが見られるような形にしたいと考えているのだが、そこに並べることになるだろう、かなり格好いい1冊である。
(ことしの本棚 第2回 針谷和昌)
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