仕事柄、何人ものアスリートにインタビューしてきた。中でもラグビーは、延1,000人を超える。インタビューでは、いつも“ラグビーをやる魅力”について訊いてみる。そうすると、だいたい答えは3つのいずれかになる。
一つは、相手をぶっ飛ばす楽しさ。ぶっ飛ばせばぶっ飛ばすほどそれが良いこととされるので、根っからの暴れん坊たちにはたまらない。二つ目は、体の痛さ。ぶつかり合って体が痛いけれど、そこに体を存分に使って生きている実感がある。そしていちばん多い答えが、皆と勝利を分かち合うとき。その時のためにしんどいことをやり続ける。皆がそれぞれ犠牲を払って、チームを勝利に導くことに、彼らは喜びと魅力を感じる。
『動物たちは何をしゃべっているのか?』(山極寿一 鈴木俊貴/集英社)
「ヒトが進化したサバンナには森がないから、なんとかして天敵に立ち向かわないといけない。ときには、自分を犠牲にしてまで集団のために行動する必要だってあったでしょう」
「だから他者に共感する力が必要になり、そのための踊りや音楽が進化したんだと考えられています」
「ある個体にとっては不利な自己犠牲的な行為でも、群全体にとって有利ならば進化する」
YouTubeでたまたま鳥の言葉がわかるという鈴木俊貴を知って興味が湧き、彼の本を探したら、山極寿一との対談本を見つけた。その中で山極寿一が話しているのが、上記のヒトの進化の仕方。読んですぐにラガーマンたちの姿が思い浮かび、彼らの喜びは、人類の進化の根源に直結しているんだと納得した。同時に彼らだけでなく、見ている我々も魂を揺さぶられるのはなぜなのか解った気がした。そしてラグビーが突出した1人だけのスターを生み出さない理由も。
(針谷和昌)
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