『サッカーは最初の5分を見よう』(後藤健生/Gakken)
後藤健生さんとお会いしたのはすいぶん前だけれど、その時、僕は胸を張って後藤さんに「僕はビーチバレーの世界選手権とオリンピックのすべてを観戦しています」と話した。1987年、88年、89年とブラジルのリオデジャネイロで行われたビーチバレー世界選手権、そして1996年の初のオリンピックビーチバレー(アトランタ)、そして1997年にアメリカのロサンゼルスで行われた世界選手権、これら5大会すべて観たとなかば自慢する僕に、後藤さんは「それは凄いですね」と、まったく張り合う素振りもなく素直に感心してくれた。
鼻息が荒かったこちらの方としては若気の至りではあったけれども、後藤さんにはそういうある種“マニア”同士の話ができる雰囲気があって、サッカーとビーチバレーと競技は違えども、僕はお手本としてずっと意識してきた。そしてその後、2年に1度行われるようになったビーチバレー世界選手権も、アテネオリンピックもカバーできずにいる僕は、マイペースな後藤さんとの距離が開いて、今ずっと先を走っている後藤さんの後ろ姿を見る思いでいる。
サッカーを見続けて5000試合を超えた後藤さん。そうやって観戦試合数を数えているところが、マニアのマニアたるところではあるのだろうが、その後藤さんが書いた「観戦術」はさすがに面白い。後藤さんには「そんなことも知らないのか」と言われそうだけれど、「無酸素運動を行うためには筋肉量が必要であり、日本人は筋肉量という面で欧米人はもとより、韓国や中国の選手にも劣る…」(p82)なんて、初めて「教えてもらった」という感じである。
前に紹介した『誰も知らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術』(荒川静香/朝日新書)と共通する“競技の見方”ガイドブックだと思う。この手のものは、他の競技でも必要とされるはずで、東京オリンピックまでに開催全競技のこの様な本がそろったら、われわれの観戦力は確実にレベルアップするだろう。何の競技を誰が書いたら面白そうか。それを考えるだけで面白い。
(日々本 第327回 針谷和昌)
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