友人が親の書(描)いた絵本を本にしたいと言ったことがあってそのとき先ず思い浮かべたのは共通の友人が勤めるポプラ社だった。ポプラ社と言えば絵本を始めとした児童図書専門出版社である。そのポプラ社が去年9月「未来への挑戦!」という宣言のもと新書を刊行し始めた。
まだ刊行3ヶ月余りだけれど既に「ポプラ新書」は20册も出ていて『負ける力』(藤原和博)『バカボンのママはなぜ美人なのか』(柴門ふみ)『歌と宗教』(鎌田東二)などちょっと読んでみたい本が数多くある。そんな中で手に取って一気に読んでしまったのがこの本。
『わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ新書)
アンパンマンの作者としてそして昨年94歳で亡くなられるまで最高齢漫画家として活躍されていた著者。実はよく知っているようでこの著者のことを殆ど知らなかったことをこの本を読んで知った。
学校卒業と同時に入隊。終戦後日本橋三越入社。宣伝部で Mitsukoshi のロゴを描く。三越を退社しフリーとなりマンガ家に。漫画ルポや漫画インタビューで芸能人インタビューや現地ルポの仕事。CMやラジオ番組のシナリオ。宮城まり子のリサイタルの構成台本。ステージ構成や司会。テレビ番組ニュースショーの構成。『手のひらを太陽に』作詞。NHK『漫画学校』先生役。虫プロ初の長編アニメ『千夜一夜物語』美術監督&キャラクターデザイン。雑誌『詩とメルヘン』責任編集。絵本『やさしいライオン』~『あんぱんまん』。絵本『いねむりおじさん』『チリンのすず』。ミュージカル『怪傑アンパンマン』。テレビ『アンパンマン』。
食えないから何でもやったということだけれど結果的にとにかく多彩。漫画家であるけれど絵本を500册描いて詩集も50冊出している。「手先が不器用」と本人は書いているけれど何が器用で何が不器用なのかわからなくなってくる。
「悪い人にも正義感はある」「正義でいばっているやつは嘘くさい」「自分が傷ついてもやるという気持ちがなければ正義は行えない」「自分なりに戦えばいい」…巻末に「本書は、児童向けに刊行された『未来のおとなへ語る わたしが正義を語るなら』(ポプラ社刊)を内容はほとんどそのままに、新書化のために編集し直した作品です。」とあるけれど児童も大人も関係なく読まれていくと思う。子どもとか大人とかいい人とか悪い人とかどんな職業かとか そういう仕切りをとっぱらったところに著者がいる。
(日々本 第319回 針谷和昌)
※ポプラ:白楊の樹
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