『放射能と健康被害 20のエビデンス』(岡田正彦/日本評論社)
大震災があった年の11月末に出ている本。もっと早く気がつけば良かったなぁと思います。実にわかりやすい。出だしからこんな感じです。
・放射能とは、いったい何なのだろうか?
・鉱物、植物、動物など、この世に存在するすべての物質は、どんどん細かく分けていくと「原子」に行き当たる。おなじみのところでは、酸素、水素、炭素、窒素、鉄などが原子の名前だ。
・原子はさらに細かく分けることができ、中性子なのいくつかの粒子になる。ほとんどの原子は各粒子を安定した割合で持っていて、放置しておいても何事も起きないが、まれに比率がアンバランスな物質が存在し、いくつかの粒子が外に飛び出そうとする性質を持つ。これを「放射性物質」といい、原子炉の燃料として使われている。
・「ウラン」がその代表格だ。
・原子からいくつかの粒子が飛び出すことによって放たれるエネルギーを「放射線」、放射線を発する能力を「放射能」という。
レントゲンもベクレルも、人の名前=博士の名前だそうです。キュリー夫人は2回、旦那が1回、娘が1回、家族で合計4回のノーベル賞受賞。とてつもない一家ですね。
この本でも検診でのエックス線について疑問を呈しています。「健康な人が定期的に検査を受けても死亡率は減少しない」「がん検診で死亡者の数を減らすことはできない」。それはより具体的な数値として書かれています。「一回の胸部エックス線検査で肺がんが5.4パーセント増える」「CTは、二次がんの発生リスクを確実に高める」「エックス線検査のリスクは、利益より大きい可能性がある」。
さらに「地球温暖化」に関しても、「1998年以降の気温に、いっさい上昇傾向が認められない」と書いています。温暖化したと言う原因がここにあるんだ!と僕がハタと膝を叩いたところは以下です。
「ここ30年間で、地上局の数が6000点から1500点へと激減したことが原因」とするもので、以下はその説の概要である。
・地上局の多くが廃止されたのは確かで、「コンピューター技術の進歩で観測点を減らしても予測計算ができるようになったから」というのが、表向きの理由とされている。しかし実際には、廃止された地上局の多くが(メンテナンス上の理由からか)人里離れた地域のものだったようだ。
・そうだとすると、この観測網で得られたデータは、人口密集地に重みがかかっていて、地球全体の平均気温を表してはいないことになる。人口密集地では、エアコンなどが発する熱、コンクリート製の建造物に蓄積された熱などによる気温上昇、いわゆるヒート・アイランド現象が局地的に顕著であることから、データは高めに出てしまう。
・地上局が激減した年代と、気温が急上昇した期間は、見事に一致していた。
NASAが発表したデータが、1999年版と2007年版で微妙に違っていたという指摘があったり、総電力消費の中に占める民生用需要(家庭、オフィス、小規模事業所などでの消費)の割合が六割になっており、ささやかな工夫の積み重ねで、20パーセントの節電は可能ではないだろうか、とも書いていて、結論は「原発を残しておく必然性は、どこにも見出せない」なのです。知らなかったけれど著者の新潟大学医学部教授はたくさん本を書いている。こちらもそろそろ身体にがたが来る頃だから、この先生の本を少しずつ読んでいってみようかなと思う。
(日々本 第295回 針谷和昌)
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