『なぜドイツは脱原発を選んだのか 巨大事故・市民運動・国家』
(川名英之/合同出版)
うちうちで未来のエネルギーを考えるシンポジウムをやることになって、事前打合せをしていたら、世界の現状と未来の原発の数とか、放射能の強さとか、ちょっと調べなければわからない話題になって、打合せしている相手の提示してきたデータや喋る数字に、こちらはバックデータがなく反論できない。
あんなに恐い思いをしたのだから、僕はもう原発は要らないと思っているのだが、反論できないと、ね だから原発は必要でしょ、ということになりかねない状況だった。それで一念発起。シンポジウムまで残り4日間となったあたりで、僕は続々と関連書物を買い込み、ただただひたすら読み続けた。最後に読んでいる1冊を除いて、すべて読破してシンポジウムを迎えた。上記に加えて
『放射線と冷静に向き合いたいみなさんへ』(ロバート・ピーター・ゲイル&エリック・ラックス/朝長万左男 監修/松井信彦 訳/早川書房)
『放射能と健康被害 20のエビデンス』(岡田正彦/日本評論社)
『原発の正しい「やめさせ方」』(石川和男/PHP新書)
『ほんとうの環境白書』(池田清彦/角川学芸出版)
『ブータンで本当の幸せについて考えてみました。「足るを知る」と経済成長は両立するのだろうか?』(本林靖久+髙橋孝郎/阪急コミュニケーションズ)
を読む。こんなことがなければ、これらの本は読まなかったなと思うと、ムキになるのもたまには良いかもしれない。
『なぜドイツは脱原発を選んだのか 巨大事故・市民運動・国家』を先ず読んだ。ドイツは環境教育がベースにあり、反原発運動の中から生まれた緑の党が大きくなって、環境先進国になった。そして福島原発事故を受けて、2022年までに完全撤廃を図る。なんとも潔い。
ドイツは自国では原発を止めているけれど、それで足りない分はフランスから原発でつくった電力を買っている、というのもよく聞かされて来た話なのだけれど、今回調べてみて、これは事実と反していて、逆にフランスがドイツから不足する電力を買う年もあるということだ。
先の見えない時代に先を見て行動する。しかもやせ我慢が一部あっても気持ちの良い方向へ向かう。希望と勇気が感じられるそういう国が未来を創り出すのだろうと思うし、日本も絶好のチャンスなんじゃないかと思うのだけれど、なかなかすっきり行かないものである。そう言えばもう20年以上前に、環境共生住宅のお手本を、ドイツに見に行ったなぁ…突然そのことを思い出し、あの時のドイツと今のドイツが、今回僕の中でがっしりと結びついた。
(日々本 第293回 針谷和昌)
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