比較的“買う本屋”とどんなに綺麗で好きな場所でもあまり買わない本屋があって、その買う方の本屋に“平積み”になって置いてあって、タイトルにも違和感がなく加えて“帯の言葉”に惹かれ、表紙を中心としたデザインが生み出す“たたずまい”も悪くなく、“ノンフィクション”であり“翻訳もの”であることもすぐにわかり、それまでに買おうと思って手に持っている本が“数冊”あるという条件が整い、さらにチラチラと立ち読みしてみて、良い感じであるならば、文句なくその本を買うことになる。
『繁栄 The Rational Optimist』(マット・リドレー/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
この本はそういう本である。帯の「山形浩生氏推薦! 僕は全部本当だと思う。」が利いている。翻訳家・山形浩生が訳した海外の本は面白いし、翻訳だけでない著書があって、この本は山形浩生の翻訳ではないけれど、この人が推薦するなら、という力がある。そして出版社が「ハヤカワ」であることも、買う動機のひとつではある(僕を最も後押しする出版社は「ちくま」であるが)。
まだ読み始めたばかりだけれど、立ち読みで好感を持った良い感じが続いている。文庫で全619頁の大作なので、このままスイスイと読めるという訳ではないだろうし、他にも読みたい本がたくさんあるので、寄り道は避けられないが、これだけ “ ” に当てはまる本に巡り会えたのは、幸運であることは間違いない。そして「本を買う時」は自分の調子が良いときであるのも間違いないと思う。
(日々本 第289回 針谷和昌)
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