『英語のルーツ』(唐澤一友/春風社)
自分の草野球チームをつくって、もう17年になる。そのきっかけとなったのが、Jというアメリカ人女性。日本の会社でマーケティングを担当していて、僕のやっていたスポーツに協賛してくれたのがきっかけで、公私ともに親しくなって、野球チームをつくろう、じゃあ手伝うわ、ということで始まった。
彼女とは異性だけれども親友、という感じ。4年後に彼女は母国アメリカに帰り、それがたまたまシアトルで、それからさらに6年が経ち、メジャーリーグ4年目のイチローがシーズン最後の本拠地3連戦で、安打の歴代新記録を達成しそうだというので、シアトルへ行って彼女のお陰で新記録を目の当たりにし、彼女とも毎日のように会った。
彼女は結婚して子どもも生まれ、仕事も順調に進んでいて、日本にいた時と同じかそれ以上に生き生きとしていた。彼女に会えたことがことさら嬉しかったのは、日本からアメリカへ戻った直後から、しばらく彼女から音信が途絶えてしまっていたからで、たまたまイチローが新記録を達成する前の年に、共通の仲間が彼女の居所と連絡先を入手して、僕ら日本の仲間との交信が復活したばかりだった。
そんな訳で、ある晩、オイスターバーで夕食をともにした時に、僕は「もう二度と音信不通にならないように」という話をしながら、なぜだかボロボロ泣いてしまった。こちらが泣いているのと対称的に、彼女は優しくも冷静だった。その冷静さを感じながら、もしかしたら再び、という予感がチラッと頭をよぎった気がする。そして本当に再び、いまどうしているか、僕も仲間も知らない。
なぜかあのオイスターバーの一夜を、この本を読みながら思い出した。きっと僕の「ルーツ」に触れるものを、彼女が持っているのだと思う。彼女と共につくった草野球チームはあと3年すると創立20年。いままで約160試合を行ってきたので、200試合も近い。どちらが先にやってくるか。そのどちらかの節目に、彼女を探し出し日本に呼んで、特別席に招待して、記念試合をやってみたい。
(日々本 第284回 針谷和昌)
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