日々本 其の二百八十「本屋図鑑」

『本屋図鑑』(得地直美 本屋図鑑編集部/夏葉社)

何でもそうなのだけれど、同じものがたくさんズラーっと並んでいると、あるいは圧倒的な量のものが整然と配置されたシーンを見ると、とても惹き付けられる。これはどんな心理なんだろう?といつも考えるのだけれど、いつもよくわからない。

この本に次から次と出て来る本屋さんの、綺麗に本棚に並んだ本のイラストを見ていたら本がズラーっと並んでいて、本屋の魅力のひとつにそこがあるのかもしれないということに改めて気がつき、いゃ、その魅力は図書館の方がより強いかもしれないなんて考えた。

図書館の方が“アート”である。本屋はもっと複雑で、図書館に比べたらゴチャゴチャしている。そのゴチャゴチャが、生きて動いている、という感じがするし、図書館の方はそれと比べてみると、眠っているという感じだろうか。

文庫や新書のコーナー以外は、本の大きさがまちまちで、それを色や文字、もちろん内容も加味しながら、どう並べるかというのは、これは別の意味でのアートであり、アートでも立体や建築に近い。本屋は商業的空間であるから、まさしくディスプレーとも言える。

そうやって、アート的に本屋や図書館を見て楽しむこともできるし、手にとって内容まで踏み込んで、知的空間として楽しむこともできる。本屋であれば商品として吟味することもできる。

われわれ本の宇宙の最終目標は、まだ誰も見たことのない図書館を創るということなのだけれど、その端緒として、本屋と図書館を合体させるという案を考え、某書店にも相談したことがある。某書店も同じことを考えていたのか、数年前からそういう試みに実際にトライしていて話題になった。

考えを実行に移す力。それは構想が大きければ大きいほど、つねにわれわれの課題である。

日々本 第280回 針谷和昌)

hariya  2013年8月11日|ブログ