『南相馬少年野球団 フクシマ3・11から2年間の記録』(岡邦行/ビジネス社)
7月中旬に自分としては珍しく夏休みをとって福島へ3日間行った。その時に往復の電車の中で読もうと思って持って行ったのがこの本。福島では今年のプロ野球オールスター戦第3戦も下旬に予定されていたので、結構ピッタリなんじゃないかという気持ちもあった。
ところが行き帰りとも一緒に行った友人たちと会話している間に目的地へ着いてしまい、結局ほとんど読めず仕舞い。今度は自分の草野球のために、ずっと治らない腰痛が酷くなるばかりでこれではもうピッチングが出来ないと思い、群馬の鍼の先生のところへ行くことになり、その行き帰りで読むことにした。結構、自分の行動とリンクする本を読むように意識している訳である。
読んでみると、少年野球のことよりも、少年たちがそして彼らの家族たちが、この大震災と原発事故によって、どんな状況だったかということが、とてもリアルに伝わってくる。7月中旬の福島行きの車中でこれを読んでいたら、思い込みが強くなり過ぎていたかもしれない。
福島第一原発3号機建屋が3/14に爆発したが、その爆発の1時間20分前に、南相馬市役所庁舎内を、迷彩服姿の自衛官が「また原発が爆発するぞ。100キロ圏外に逃げろ!」等と叫びながら各階を走り回っていたという。そんなことも知らずに外で作業していた地元の有志による消防団員たちは、爆発音を聞いて煙を見た時に、人生終わったな、放射能を浴びて今さら逃げてもしょうがない、だったら消防団員としての任務を果たそうと、海岸の方へ出動したという。
事前に爆発の可能性が高いことを知っていた人たちがいたという事実。そして、爆発という事態を冷静に受け止めて行動する人たちがいたという事実。ともすればどちらもドサクサにまぎれて忘れさられてしまいそうなことが、しっかりと記されているところに、とても価値があると思う。そしてこの本では野球に象徴されているが、日常を奪われるとはどういうことなのか、自分には何ができるのかなど、改めて考えさせられることが多い。
(日々本 第275回 針谷和昌)
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