『「左脳・右脳神話」の誤解を解く』(八田武志/化学同人)
其の二百四十九の続きになります。『奇跡の脳』を読んですぐに「右脳・左脳」の本を探し、この本が最も僕の疑問に応えてくれるのではないかと購入しました。僕の疑問は幾つかありましたが、最大の疑問は「右脳と左脳は別々に使うことができるのか?」ということです。
そして読み始めてすぐ、著者はその答えを書いてくれています。
「左右の脳は独立では動かない」
「左右の脳が離断されていない健常者で、片方の脳だけを用いて何かできるなどあり得ない…」
つまり、『奇跡の脳』の著者ジル・ボルト・テイラーさんのように、左脳が機能しなくなるアクシデントなどがない限り、右脳のみを動かすということは不可能ということで、そういう意味でもそしてそれが脳科学者テイラーさんに起こったということを加えると、何重の意味での「奇跡」だったのだと改めて思います。
そこで考えてみたのですが、両目を開けながら片目だけでものを見る、ということはできません。でも片目をつぶれば開けている方だけでものを見ることはできます。そしてかなりな部分、それでも用を足すところはあります。でも脳の場合は、片方を閉じる機能がわれわれには備わっていません。なぜかわかりませんが、それはつまり左右どちらかの脳だけでは、大きく何かが欠けてしまうということなんだと思います。
最初に生物にできた時はもともととても小さかった脳が、大きくなって左右でそして部分で、担っている役割が違うというところまで細分化されたというのは、不思議といえば不思議です。小さかった時には小さい中ですべてやっていたのが、大きくなるとそうも行かなくなる。なんだかそれと同じように、われわれの社会も進んできているようなところがあります。そういう意味で脳と社会は繋がっていて、繋がり過ぎてきた部分で、いろんなリスクが生じ始めているのではないかと考えたりもします。
余談ですが、僕は「右脳・左脳」を「みぎのう・ひだりのう」と読んでいたのですが、友人たちと話しているとどうやら「うのう・さのう」が一般的なようで、ここのところそう読むように努めてきました。でも先日、前野教授が言っていたのですが、正式には「みぎのう・ひだりのう」で良いようです。
脳が社会ともっと繋がり、脳の勢力がより拡大されて行った先には、どんな世界が待っているのでしょうか。脳のことを脳が考える。そしてわからないことがまだたくさんある。とても不思議です。
(日々本 第259回 針谷和昌)
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