日々本 其の二百五十八「タクシー」

『なぜタクシーは動かなくてもメーターが上がるのか』(竹内健蔵/NTT出版)

「タクシー」という言葉に目を奪われ、「経済学でわかる交通の謎」というサブタイトルに後押しされて、即決で買う。この春、某タクシー会社の社長をお招きし、“タクシーの未来”について多くの仲間たちとともに討議するイベントを行った。その準備で僕は事前にその会社へ行き、担当者にタクシーの今をいろいろな側面から、とても丁寧に教えて頂いた。そんなベースがあったので、それまで乗るだけだったタクシーへの関心が、グッと高まったままであった。

この本はそんなこちらの関心に十二分に応えてくれる。ことはタクシーに限定せず、経済全体の話に及ぶ。

・経済学的思考で「効率的である」ことの目的は「幸福」ただ一つで、社会全体の幸福を最大にすること

・将来世代へのエネルギー配分まで考えると、省エネ政策は一概に不効率な政策とは言えない

・交通では生産する時間と消費する時間が完全に一致していて時差がまったくなく、つまり在庫調整ができない

・同様に交通では生産する場所と消費する場所が一致する

・沿線の住民に利用可能生というサービスを提供

最後の「」はバスについて書かれたものだけれど、タクシーも住民に利用可能生というサービスを提供し続けている。通常の交通手段よりも割高だけれど、タクシーの未来はこのある種の“セーフティーネット”的な存在意義と実務にあるのではないかと、イベントの準備・実施と今回の読書を通じて考えた。もう一度何かの機会に、“タクシーの未来”を真剣に考えてみたいと思う。

日々本 第258回 針谷和昌)


hariya  2013年6月26日|ブログ