『岡本綾子のすぐにチェックしたい! ゴルフの急所』(岡本綾子/日経プレミアシリーズ)
日本の女子ゴルフ第一人者である宮里藍のアメリカプロツアーLPGA優勝回数は9。岡本綾子はその数17、しかも87年には当時アメリカ人以外初というLPGA賞金女王になった選手。今年5月、日経新聞の「私の履歴書」を連載する直前に出たのがこの本で、両方並行して読んでみた。
この日本ゴルフの女王が、ショットのイメージがはっきりと浮かび、インパクトで芝が何枚からむのかまでがわかったという「ゾーン」に入ったのが1985年。その後、腰痛に苦しんだそうだが、その試練の前に神様が与えてくれたごほうびだと本人はとらえたという。この岡本綾子にしても神様からのプレゼントはその1回限り。ゾーンに入ることがいかに難しいか。
そんなゾーン体験を含めたエチケット&メンタル編からスタートして、技術の話へと入っていく。僕はゴルフはやらないので、本題である技術の話はだいたい飛ばして読んだ。余談だけれど、運動神経と関係なく、ゴルフは万人のやるスポーツ。僕はやりません、と言っても、やってみようよ、と誘ってくる人が多い。酒は飲みません、というと、飲もうよと言う人と同じぐらいいる。そして大抵いずれもかなり執拗なお誘いとなる。
これには本当に困る。何か上手い断りはないかと考えるが、結局嘘をつくしかなさそうだ。肝臓が悪いので、とか、膝が悪くて長時間歩けません、とか。なぜ嫌いな嘘までつかなければいけないのか。お願いだからほっといて、と言いたくなる。閑話休題。
技術編は読まないけれど、それでも目に入ってくる言葉がある。例えば、手打ちになっているケースで多いのが、右手の強い人。そういう人にお薦めなのが、オーバーラッピング・グリップといって、右手の半分以上、上から左手を重ねるグリップ、という話。野球のバッティングでも右手が勝つことが多いので、これ試してみる価値がありそうだと思う。
最終章の準備編には、炭酸飲料が好きでよく飲んでいたけれど、何かの本で炭酸飲料は骨を弱くするという話を読んで、いっさい止めたとある。酒を止めてからビールの代わりじゃないけれど、僕も炭酸飲料をかなり飲むようになったので、ちょっと気になる話である。
さて技術の話を飛ばしたけれど、チラチラとページをめくっていきながら眺めていると、かなり具体的に、しかもポイントが分かりやすく、明快に書かれているように思う。この本はゴルフをする人にとって、絶好の教科書なのではないか。岡本綾子ほどの選手なら、どっしりとした技術編、人生編、ゴルフの未来編など3部作ぐらいの、ゴルフのバイブルを出しても良いのではないか。
(日々本 第250回 針谷和昌)
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