先日、とある女性音楽家がカフェに夕方から来てくれて、食事や飲み物を楽しみながら、共通の友人である小説家も交えて、閉店までいろいろな話をした。彼女はある楽器の世界的な奏者なのだが、子供の頃はお父さんにテニスを教わっていたそうで、スポーツの世界の理解度も高い。そして演奏中、スポーツの世界でい う “ゾーン”に、たびたび入るという。
「サッカー 本の宇宙」コーナーに案内すると、先に小説家が『ボールの周辺』を取り出し、続いて彼女が何を 選ぶのかに注目していると、この本を手に取った。
なんだか無条件に納得してしまい、なぜ彼女がこの本を選んだのか聞き忘れてしまった。
さて、この本のタイトルにある「王国」とは、ブラジルのことである。そのブラジルからたくさんの選手が日本へやってきた。そんな彼ら、そしてそのルーツとなったサンパウロの日系人リーグの創設時代の人々が、次々に出てくる。ネルソン吉村、与那城ジョージ、セルジオ越後、マリーニョ、 オスカー、エドゥ、石川康、ベッチーニョ、サンパイオ、ジーニョ、アラマオなどなど、そして最後に闘莉王になる前のトゥーリオ。
彼らの人生の記録として、また日本サッカーの歴史としての物語が著されている。ちなみに、この著者の本は、「サッカー 本の宇宙」の本棚に、もう1冊ある。
『大和魂のモダンサッカー』(加部究/双葉社)
デットマール・クラマーさんと往年の日本代表チームの物語。物語の中に、歴史と記録と文化、そして情熱が見える。そこがこの著者の、両方の本に共通して究めている点なのではないかと思う。
(文・社団法人 本の宇宙)
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