『猫なんかよんでもこない。』(杉作/実業之日本社)
人気らしい。たまたま家にあったので読んでみた。2匹の雄と雌の猫が出てくる。飼い主は元ボクサー、そして猫を飼い始めたのを機に猫の漫画家となった著者。実話なので受けているのだと思うが「そーだよね」という猫の行動がたくさん出て来て、改めて僕の家でも飼っている2匹の猫、こちらは雌2匹だけれど、彼女たちの行動がより可愛く見えてくる。もともと可愛がっている(文字通り猫可愛がりしている)方だと思うけれど、それでも読む前と読んだ後では扱い方が違ってきた筈。それほど楽しくリアルで、そして悲しい漫画だ。
悲しいのは別れがあるから。その原因を飼い主である著者は自分のせいだと感じている。大人しい雄猫を無理に町の猫のボスにしようとしたからという理由。僕はこういう話に弱い。小さな子が大人にいじめられるような話がTVドラマでもあったりすると、とても見ていられない。闘鶏で悪意で大人に足を傷つけられた(子どもが可愛がっていた)強い鶏が無抵抗のままやられてしまう話を読んだことがあるけれど(確か目取真俊の小説だった気がするけど)、たまらない。少し筋は違うけれど、何故かそれと同じ感情が湧き出て来る。
それが何故なんだろうと、いつも思う。たぶん自分の経験のどこかを刺激されるのだと思うけれど、それがどこなのかわからない。一方で、子どもたち(中学生)が大人に負けずに新しい国をつくってしまう『希望の国のエクソダス』(村上龍)や、弱い親父が高校生に鍛えられて娘のためにリベンジする『フライ,ダディ,フライ』(金城一紀)なんかが好きなのは、その対極にあるから。それまでの通念や価値観に押さえ込まれるのが嫌い、それをぶち破っていく話が好き、というところまでは何となく自分でもわかるのだけれど、まだそこのところの感情の全体を、うまく説明できない。
(日々本 第241回 針谷和昌)
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