『Smile』(田中理恵/ベースボール・マガジン社)
購入するのにちょっと勇気がいる本でした。それはひとえにオッサンである自分自身のせいですが、仕事でも関係するアスリートの本であるということ、今度自分が関わっている別のアスリートの本が同社から出版されるので参考に、ということを理由に本屋で見つけた瞬間に手に取り購入しました。
ロンドンオリンピックで活躍する内村選手の姿をTVで見ていて、自分でも何かやってみたくなり、家の近所の公園に鉄棒を見つけて、後ろまわりをやってみました。それこそ30年振りのチャレンジです。当時体で覚えたコツを思い出しながらエイヤッとやってみると、何と一発で成功。気をよくした僕は、それから毎日続けていたのですが、うまくできる日もあれば、できない日もある。しばらくすると原因不明の腰痛が発生し、主治医と話してみるとどうやらこの鉄棒が原因。それできっぱりと止めました。
ただその鉄棒をやり始めてすぐ作ってみた『鉄棒公園』というフェイスブックページは、それからずっと続けています。僕のように体操を見て刺激を受けて、自分でもやってみよう、と思った時に、近くの公園にあることがわかれば、きっとトライしてみる人が増えるのではないかと、全国の方々のご協力を得ながら、鉄棒がある公園を紹介しようと考え作ったページです。
田中理恵選手の子どもの頃の家にも、鉄棒があったそうです。やっぱり身近に鉄棒があるということは大事なんだと思います。ちなみにネットで調べたところ、全国の公園の鉄棒は、46,000ヶ所あるそうです。それを載せきるまで自分が生きているのか、あるいはフェイスブックがずっと活用され続けるのかわかりませんが、すぐにやれる、という環境は人の能力を引き出すひとつの大きな要素なのではないでしょうか。
この本ではそれに加えて、家族の力、がトップアスリートを育てる上で、とても大きな役割を果たしていると感じます。父親、母親、兄貴は常に温かく見守り、妹と弟はいざという時にお互いに厳しいことを言って相手を正しい方向へ導く。この家族の力から“オリンピック代表3きょうだい(兄妹弟)”が生まれたんだと思います。家族がベースになり、他の多くの人たちのサポートも受けてアスリートは戦っています。
トップアスリートは周りの応援をより多く得られる人、と言い換えても良いかもしれません。体操のような個人競技は、なおさらその部分が大切なのではないでしょうか。戦いは孤独ですが、そこへ向かって行く力は、人々の応援が支えに出て来るのではないかと思います。
(日々本 第239回 針谷和昌)
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