『SOLO 希望の物語』(ホープ・ソロ
アン・キリオン/タカ大丸 訳/KKベストセラーズ)
前回のオリンピック優勝、ワールドカップ準優勝の女子サッカー米国代表ゴールキーパーの自伝。長身で美人の“希望”という名の選手である。オリンピック準優勝、ワールドカップ優勝は日本の“なでしこ”たちなので、まさに好敵手。波瀾万丈の人生をたどる中、日本チームに大きな好意を持っている彼女に、なでしこのシュートが阻まれたのならしょうがないと、この本を読んだ後に思う人が多いのではないだろうか。
世界最大のプルトニウム製造炉がある町に生まれ、通っていた高校のロゴは核爆弾のキノコ雲、町のモットーは「キノコ雲を誇れ」。詐欺師で女たらしで犯罪者だった父はその後ホームレスになる。そして母親の再婚と新しい父との同居。
そんな中、中学時代に何になりたいかと聞かれて、まだ世の中に存在しなかった「プロサッカー選手」と応えたソロは、「サッカー場にいる時だけ、私は本当の意味で束縛が全くない自由を味わうことができた」と言う。中学・高校と学校のチームではフォワード、オリンピック育成プログラムではゴールキーパーという対照的なポジションにつき、フォワードでも「一人(ソロ)で試合を決め、チームに希望(ホープ)を与えているのだ」と言うぐらい活躍した。
シアトルにある大学へ進学した時期に、真の父親に殺人容疑がかけられる。試合中に腕の大怪我もする。代表チームのヘッドコーチとの軋轢があり、代表チームでインタビューのコメントが問題になり、そんな時に父親が亡くなる。ワールドカップ2007決勝戦メンバーから外され、チームは大敗。一方、ゴールを守っての北京オリンピックでの優勝。そして“親友”宮間あやとの出会い。宮間所属の日本との決勝負け準優勝に甘んじたワールドカップ2011、さらにその日本に勝ち優勝したロンドンオリンピック。
「…私は西シアトルのアルカイ・ビーチ近くの暮らしを楽しんでいた…ビーチバレーをしたり近所のカフェを回ったりしていた…」とプライベートの記述に出て来る。32歳、ゴールを守る彼女の姿も、まだまだ見てみたいと思うが、背が高いし、若い時にバレーを選んでいたら、サッカーではなくビーチバレーでオリンピックに出て来ていたかもしれない。その姿も見てみたかったと思う。
(日々本 第232回 針谷和昌)
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