『眼・術・戦 ―ヤット流ゲームメイクの極意』
(遠藤保仁×西部謙司/KANZEN)
僕にとって今のサッカー日本代表で最も注目している選手が遠藤保仁であり、現代のサッカーライティングで最も楽しませてもらっているのが西部謙司なので、この本は見た瞬間に買わざるを得ない。
バルセロナのチャビがボールが来る前、ボールを止める前、止めてから蹴る前、いずれもこれでもかとキョロキョロしているという話は、「サッカー選手は他の競技に比べてキョロキョロしている」と思っていた僕のサッカー選手に対する印象にピッタリ来る。
ブラジルの名選手ソクラテス(身長193cm)が自分のサイズはサッカー向けではないといったという話の後に、ジーコ172cm、ペレ171cm、マラドーナ165cm、メッシ169cmと列挙されると、もしかしたらかなり日本人に合ったスポーツなのではないかと思ったりする。
期待に違わず、こういう周辺情報のひとつひとつに興味をそそられるのであるが、やはり真骨頂は遠藤選手の類い稀なる才能と努力の部分。遠くまで見えていること、ボールが来る前に3~4つのプレーを用意していること、ボールをとられると思っていないこと、相手の眼をみていること、走りすぎないこと、相手にポジションをダブらさせてしまうこと、どんな強豪相手にも自分たちのサッカーを貫こうとすること…。
遠藤選手には、サッカーではまだ殆どない“プレーイングマネージャー”になってほしいと思う。それにはS級指導者ライセンスという資格制度が立ちはだかるのだが、飛び級などの特例をつくって何とか実現できないものか。
選手兼監督はもちろん想像を絶するぐらい大変だろうけれど、国内にとどまる日本の宝が、きっとまだ秘めているその才能を存分に発揮するには、少しばかり過酷な環境を提供するのも良いのではないだろうか。
(日々本 第229回 針谷和昌)
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