『縮む世界でどう生き延びるか?』(長谷川英祐/メディアファクトリー新書)
前作『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)は、慶大三田キャンパス生協書店の“働く”シリーズの本を探している時に見つけて、読んで、リストに加えた。その数ヶ月後に、さまざまな書店で目立つところに置かれるようになっていて、“先に見つけた”的にこっそりと嬉しかった。そのベストセラーに続く著者の作品なので、今回はどの書店でも初めから目立つところに並んでいる。
進化生物学者から見て、現在の人口そして経済が“縮む世界”では、今後どうしていったらいいかということが生物学的観点から書かれている。従って前著に続く“愉快痛快な生物学第2弾”と唱われているけれど、中小企業、いや小企業経営者としての自分にとっては、経済そして経営について書かれている本だと感じる。これからの経営のヒントをたくさんもらった気がする。
...経済学というジャンルは、産業革命以降の経済状況を分析するために生み出された学問です…つまり、経済学という学問は縮む世界での経済活動を扱ったことがありません…
…ある生き物が利用可能な空間やエサなどの資源を生態学の用語でニッチ(生態的地位)といいます…
…貨幣と貯蓄、この二つが人間の生活を決定的に変えました…
…「棲み分け」は…互いの競争を緩和するようにニッチがずれた結果…
…北海道の石狩浜にあったエゾアカヤマアリの巣集団…コロニーのなかには3億匹あまりものワーカーがいたと推定されました…
…小さなコロニーでは各ワーカーはなんでもできる汎用性を備えていたほうがいい…
…すでに競争相手が存在する飽和した安定環境では、単位時間あたりの仕事処理量を増やして短期的な競争力を高めてもあまり利益につながらず、長期的に存続できる能力のほうが強く選択されます…
…縮小環境ではまったく反対の、ゆっくり成長する、少ししか子どもを産まないといった形質が有利になる…
…「縮む世界では、どう振る舞うのが適応的なのか」…「個」として小規模…小さな利益を確実に確保できるように…利益が出た場合それを生産増大(や消費)に費やさず「個」の耐久性を高めるように使う…
…学者の相互査読によって成り立つ学術論文の世界…
友人の大学生に貸してあげるという約束をしたので、急いで読んだ。就活前の大学生は、さてどんなふうに読み取るんだろう?
(日々本 第225回 針谷和昌)
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