『日本プロ野球改造論』(並木裕太/ディスカヴァー携書)
サブタイトルにある「日本プロ野球は、日本産業の縮図である!」をテーマに、現在のプロ野球改革案が綴られている。著者はもともとチケットのフレックス・プライスのスペシャリストであるが、その範囲を超えた提言が刺激に富んでいて、さすがプロ野球オーナー会議でプレゼンしただけのことはある、と唸らされる部分が多々ある。
「…実は平均してしまえば、日米ともにチーム単体のビジネスの規模はほぼ同じ…両者の決定的な違いは、メジャーでは…分配金がリーグから出ること…その分配金の出処がリーグビジネス…リーグビジネスは、文字通りリーグ全体として展開する事業…放映権収入…広告獲得、オンラインでのチケット・グッズ販売など…」「…本当の競争相手が誰なのか…」「…レベニューマネジメント…航空機や映画館の座席、ホテルの部屋、ゴルフ場のラウンド、サーバコンピュータのスペースといったキャパシティーをいかに効果的に埋めるかのマネジメント…航空業界ではイールドマネジメントといいます…」「…メジャーリーグ…戦力均衡…」「…MLBアドバンスト・メディア…30チームが2億円ずつ共同出資して2000年に設立…ビデオストリーミングによる試合の視聴、チケットやグッズのオンライン販売、さらにポータルサイトの広告枠の販売など…」「…米国のマイナーリーグ、独立リーグ…ここで球場運営だとか飲食サービスだとか、多くのノウハウを蓄積している…」
途中、3人のプロ野球チーム・フロント陣と対談している。
・前沢賢(横浜DeNAベイスターズ取締役事業本部長/’74年生)
・成田竜太郎(北海道日本ハムファイターズ事業本部長/’67年生)
・根岸友喜(東北楽天ゴールデンイーグルス事業企画部長兼広報部長/’76年生)
著者は’77年生。いずれも働き盛りの人たちが真剣にプロ野球チーム運営に取り組んでいる。最近の傾向としては他業種のビジネスマンが加わってきている。たぶんその傾向はJリーグ誕生後に出てきたスポーツ界全般の傾向でもあるが、最もファンを動員しているプロ野球に、より人材が集まりやすいのではないかと思う。
著者は現在フィールドマネジメントという会社の代表取締役。僕は著者がまだマッキンゼーに勤めている頃に、一度会っている。野球ではなく、別のスポーツの人気を上げるための施策についての打合せだった。その話は結局形にならなかったけれど、新しい人たちがスポーツ界に参入してきているんだなぁという実感があった。もうしばらく経つと、いろいろなところでこの人たちが取り組んでいる成果が上がって、日本のスポーツ界が一気に変わる、ことになるかもしれないと思う。野球の未来は明るいのではないか?
(日々本 第219回 針谷和昌)
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