
『評価と贈与の経済学』(岡田斗司夫FREEex 内田樹/徳間ポケット)
この本については前回で終わるつもりだったけれど、とても個人的なことで、どうしても書き出しておきたいことが、あと2つある。いま参加しているある学びのグループと、いま最もよく話し合っているあるアスリートに関して、ピッタリ当てはまる話を、内田樹と岡田斗司夫がしているのだ。
「…そういう小さなコミュニティをていねいに手作りしたいわけですよ。その五百人くらいの人たちで、お互いに顔の見える人間が集まって、若い人たちが活躍できるように、みんなでチャンスを提供する。お金がある人はお金を提供する。コネがある人はコネを紹介する。知恵がある人はアイデアを出す。「これを覚えておくと食えるよ」という技術を持っている人はそれを教える。そういう相互扶助の互恵的な集団を作りたいんです…」(内田)。「それはつまり文系のヤクザですよね…戦前の文士ってそんな感じだったと思います…ぼくはそういうものを「拡張型家族」って呼んでるんです…」(岡田)。
毎年100余名増えていくその学びのグループは、いま時点で529人。この話にピッタリなのは、このグループには人数だけでなく、チャンスもお金もコネも知恵もある人も、そして意欲ある若い人たちもそろっているということだ。そうか、われわれが作るべきなのは「文系ヤクザ集団」か、ということにとても納得するし、このグループが「拡張型家族」になるためには、現状に「責任感」が加わるかどうかがポイントだということが、わかったような気がする。
もうひとつの話は「師弟関係」についての話。「…「この先生のほんとうの価値を知っているのは、世界で自分だけだ」ということは、言い換えると、それだけ世間的な評価が低いということなんだけど、それでいいんです。というか、それがいいんです。そういう先生に出会えたら、それだけでもう教育は成功しているわけです。だって、その先生が素晴らしい先生であることを世間に立証するための唯一の方法は「その先生に教わった当の自分がこれほど才能を発揮し、市民的成熟を遂げた」ということを満天下に知らしめることですからね…」(内田)。
とあるアスリートと、彼の中高時代のコーチとの関係は、まさにこれで、「自分がトップになることで、自分のコーチの素晴らしさを世の中に訴えることができる」という話を彼から聞いたばかり。この部分、彼にもぜひ教えてあげたいと思う。
(日々本 第215回 針谷和昌)
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