日々本 其の二百三「∧∨¬→」

『数学的推論が世界を変える 金融・ゲーム・コンピューター』(小島寛之/NHK出版新書)

すべてのくじを買えば、必ず当たる訳であるが、通常、それでは購入額の方が当選額より多くて大赤字になる。それがたまに、黒字になることがあって、資金を集め、世界から該当するロトくじを探して13回当てたルーマニア人がいるという。読んだ瞬間、3億円の toto BIG はどうかとすかさず机上の計算をしてみたけれど、残念、そう上手くはいかない。というか、それならもう既にやっている人がいるだろう。

ギャンブルや金融市場で巧みに儲ける人は、「すべてをゲームのように見なし」ていると書いてある。「すべて」というところがミソなんだと思う。金融のすべてゲームと見なし、すべてのゲームで勝つことに熱中するクイズキッズ(※)が、世界には何人もいそうな気がする。本項『其の二百』にも書いたけれど、僕もどちらかというと、いろいろと「ゲームのように見なし」ている方だと思う。でも「すべて」じゃない。その熱中する気持ちはとてもよくわかるけれど、そういう点での素質はない。

「金融取引というゲームにおいては、互いの戦略の読み合いが重要になる」そうで、「人間同士」「人間とコンピューター」「コンピューター同士」の3つの戦略の読み合いがあるという。「コンピューター同士」になると、プログラムすれば勝手にやっている訳で、かなり恐ろしい気がする。

これらで使われるのは「数理論理」で、その中に「命題論理」「述語論理」の2種類あって、初級編である命題論理で使う論理演算子には、「∧∨¬→」があるそうだ。それぞれ「かつ、または、でない、ならば」を表すそうで、僕はこの本でこれだけ覚えられたら、もう充分だという気がした。直感的にはこの「数理論理」はもう少し勉強すべきだという気がする。何か大切なもの、あるいは美しいもの、そしてきっかけになるものが含まれている気がする。

コンピューターの発明は、第二次世界大戦の兵器開発とかかわっていて、暗号解読機械と核分裂についての計算をする機械が、両方ともコンピューターの原型になったという。そして両者を別々に研究していた研究者のどちらもが、数理論理学の研究者だったそうである。わからないなりに、もう少しわかっておいた方がいい、そう感じさせる数理論理なのである。

日々本 第203回 針谷和昌)

(※):もう25年位前、アメリカでの流行に詳しいエディターから聞いた言葉。問題解決を天才的にこなしていく若い人たちのことを、当時こう読んでいたらしい。その後あまり世に出て来なかったので、一般用語になるほど認知されなかったということだろうか。

hariya  2013年2月26日|ブログ