『猫に言いたいたくさんのこと』(野澤延行/池田書店)
犬や猫の本がたくさん出ている。犬や猫に癒されている人が多いということだと思う。犬は子どもの頃に飼っていてその頃は猫はいなかったし、大人になってからは猫を飼っているが犬はいない。今の僕は家の2匹の雌猫にずいぶん癒されている。そして僕が猫に好かれているというのは思い込みかもしれないが、嫌われてはいないだろう。猫と一緒に暮らしているだけで充分幸せなので、あえて本を買おうという気にはならなかったけれど、この本はイラストがありながら何となく子どもだましでない雰囲気があり、動物クリニック院長が書いたということで、買ってみるかという気になった。
「猫は自分が確保しているなわばりの中では、常に征服者でありたいと願っている」らしい。1匹はたまに、そして1匹はほぼ毎日、僕の足の上に乗って眠りに来る。彼女がテーブルの上からあるいは椅子の下から僕に呼び掛けると、僕は隣の椅子に両足を伸ばして、その上に彼女が乗れるスペース=寝床を作る。その上に乗って、いろいろなポーズを取りながら、最後は仰向けのような姿で眠ってしまう。そこは彼女の「なわばり」なんだというのは、かなり納得する感覚である。それはとても可愛いのであるが、30分以上もその状態が続くと、足がかなり痛くなってくる。猫の方でもういいよと立ち去るよりも、もういいだろ?と声を掛けてどいてもらう方が随分多い。いつもちょっと申し訳ない気がしている。
と、書いている今も、椅子の下に来てしきりに鳴く。どうした?と足を準備すると、その上に飛び乗ってくる。撫でているうちに、いつもの後ろ向きのポーズに収まって、ゴロゴロと喉を鳴らす。撫でていると毛のつやの感触や、太ったか痩せたかもわかって、瞬時にできる健康診断のような感じだ。今日はたまに後ろを振り返り、小さく鳴く。これは眠るまで行かなくて、たぶんご飯が欲しいと言っているのだ。よし、行こう、と声を掛けて、いつも餌を入れる皿の方へ一緒に歩いて(彼女は駆けて)いく。するともう1匹もどこにいたのか着いて来て、両方が競って進んで僕を抜き去り、2匹ともそれぞれのお皿の前で、僕を振り返りながら待っている。家にずっといる時は、これらを1日に数回やるのである。その結果、我が心は存分に癒される。僕が猫に言いたいことはたくさんではなくて一つだけだ。どうか長生きしてください。
(日々本 第201回 針谷和昌)
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