『役人に学ぶ「闇給与」のススメ』(大村大次郎/光文社新書)
元国税調査官の書く「闇給与」のススメ。「役人」「闇給与」というタイトルを含めて、本物っぽくて怪しげでちょっと後ろめたい感じがあるが、書店の平積みの高さは一番低かったので、たぶん売れているんだと思う。でも電車の中で読んでいて、隣から覗き込まれたくない本ではある。
何せ「誰でも手取りが50%アップする裏ワザを大公開!」である。会社のためにもなるそうで、社員のため、会社のためのいわゆる節税方法を会得してみようと読んでみる訳である。内容についてはなるほどというところだが、節税してしまうと社会全体として税収が減るということと、社会的義務はどうなるという2点がどうにも心のどこかに引っかかる。そのことについて、最後の最後「あとがき」前後で触れられている。
・今の日本はデフレになったから給料が下がったのではなく給料が下がったからデフレが起きた
・平均賃金は平成4年をピークに下がり始め物価は平成10年に下がり始めた
・給料を上げればデフレは克服されるはず
・デフレの要因は企業が自社内に金を貯えるばかりで社員や社会に還元しないことだった
・国の財政は金を負っている人が相応の負担をすれば十分に賄える
・バブル崩壊以降、投資家、高額所得者、大企業には大減税がされてきた(法人税も所得税も半減近く)
・高額所得者、大企業の税金をバブル崩壊前の税率に戻すと20~30兆円の税増収(現在 個人金融資産約1,500兆円、大企業内部留保金約300兆円)
著者は外資系の企業は非常にドライで儲けることに専念しているので、かなりの節税対策を取ってきている、それを日本の企業はやっていないと著者は書いているけれど、何だかサッカーで言う“マリーシア”のようで、どうもスッキリこない。でももはやそんなことは言っていられない時代に、突入しようとしているのだろうか。逆に「これも一種の“ゲーム”」と捉えられれば、気が楽になりそうな気もする。
(日々本 第196回 針谷和昌)
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