『本の声を聴け』(高瀬毅/文藝春秋)を読んでいます。ブックディレクター幅允孝の仕事が綴られていて、とても参考になるとともに大きな刺激を受けています。その中の『沈黙の春』の著者である環境学者レイチェル・カーソンの紹介がとても印象的で、思わず取り上げられている『センス・オブ・ワンダー』を買って来て、それを先に読んでしまいました。この本はずいぶん前にも読んだことがあります。
『センス・オブ・ワンダー』(レイチェル・カーソン/上遠恵子 訳/森本二太郎 写真/新潮社)
「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」
「妖精の力にたよらないで、生まれつきそなわっている子どもの「センス・オブ・ワンダー」をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもと一緒に再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。」
「…「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない…」
「…子どもといっしょに空を見あげてみましょう。そこには夜明けや黄昏の美しさがあり、流れる雲、夜空にまたたく星があります。…」
「…見ようと思えばほとんど毎晩見ることができるために、おそらくは一度も見ることができないのです。…」
「地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活のなかで苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。
・地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう。」
晩年、ガンにおかされながらも書き終えた『沈黙の春』の次の、カーソン最後の作品、それがこの『センス・オブ・ワンダー』です。もともと雑誌に「あなたの子どもに驚異の目をみはらせよう」という題で掲載したものをふくらませようと手を加えている間にこの世を去り、友人たちが原稿を整え写真を添えて出来た本だそうです。
今の僕にとっていちばんの「ワンダー」は、さまざまなアートを刻々と空に描く「雲」です。子どもか、大人になかなかなれない人か、あるいは悟った人が持っている感覚が「センス・オブ・ワンダー」なのだと思いますが、少しでもその感覚を持ち続けられるように、毎日忘れずに空を仰ぎ見たいと思います。
(日々本 第193回 針谷和昌)
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