『偏愛ムラタ美術館』(村田喜代子/平凡社)
『偏愛ムラタ美術館【発掘篇】』(村田喜代子/平凡社)に続いて読む。順番が逆だけれど、『【発掘篇】』でこの本の存在も、作者のことも知ったので自然の流れ。『【発掘篇】』に比べて、最初に出たこちらの本の方が、取り扱う絵画作品の触れ幅が大きいように思う。
本を出す度に、つまり元の雑誌への連載が進むに連れて、だんだん安定感が増していくのかもしれない。そうなるとダイナミックさがなくなって面白味がなくなるのかと言えば、そんなことはない。安定感の中にある統一性みたいなものが、僕にとっては心地よく、だから僕はどちらかと言えば『【発掘篇】』の方が好みである。
作者は「ここに収めた絵は私の自分のための栄養剤だ。処方箋かもしれない」と「あとがき」に書く。世界の力学を、ストーリィの想像力を、様々な絵を通じて感じていく。読んでいて、絵から得る力は、絵の中にあるものと自分の中にあるものの、掛け合わさったものだという気がする。作者に書かれた絵は、絵そのものが持っている力以上のものを発揮しているとも思う。
この2冊を、立体にすることはできないだろうか。取り上げた作品をすべて一堂に集めて、館長・村田喜代子が解説する美術館を創るのである。いや、もう少し簡単な方法がある。村田喜代子と巡る美術館の旅。いずれにせよ元になっている掲載誌『一枚の繪』での連載がまだ続いていることを、そしてシリーズ3册目が刊行されることを願う。
(日々本 第190回 針谷和昌)
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