『宗教はなぜ必要なのか』(島田裕巳/集英社インターナショナル)
人は死ぬから宗教を求め、その宗教の体験は魅力的で、ご利益もあり、宗教はモラルもつくり、神は究極の親となる。宗教はなぜ必要なのか、章のタイトルを順に並べると、この様になる。
宗教の魅力的な体験のひとつに「イニシエーション」があるという。
「生まれ変わりの体験は…「イニシエーション」と言い換えることができます。イニシエーションとは、子どもが大人になるための成人式や、新しく信者になって教団のメンバーになる入信の儀式を意味します。その際に重要なことは、当事者は必ず精神的な変化を経験するということです…」(p66)
「…一度イニシエーションを果たし、自分は変わったという自覚を得たとしても、また別の出来事に直面して、新たな悩みをかかえたりします…」(p69)
「…イニシエーションはたった一度のものではなく、永遠にくり返されるもの…」(p69)
「…イニシエーションは、人生に一度のことではありません…だからこそ…生活全体を修行として位置づけた…座禅を組むことだけではなく、食事を作ることや、それを食べること、さらには風呂に入ることや便所を使うことにまで一定の作法を定め、それぞれの行為をまっとうすることによってこそ悟りの世界が開かれていく…」(p71)
トップアスリートは、毎日毎日基本を繰り返す。あるアスリートはそれを「深い穴を掘る」と表現する。それはつまり「一定の作法を定め、それぞれの行為をまっとうする」ということと同じことではないかと思う。彼らは深く穴を掘っていきながら、悟りの世界に近づいているのである。スポーツにおいて日本が世界をリードすることのできるポイントが、ここに秘められているのではないかと思う。アスリートとともに、それを追求していくことができたら嬉しい。
(日々本 第183回 針谷和昌)
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