日々本 其の百八十「暗黒の4年」

『SIGHT』2013 WINTER(rockin’on)

『SIGHT』は、渋谷陽一編集長自ら「3.11以降もう原発しかやらない雑誌に突然変わって」と語る(p34)ほどの“脱原発雑誌”である。2011年8月、11月、2012年1月、4月、8月、11月と原発特集が続いた。けれども今号は少々趣を変えて、「大丈夫か日本。暗黒の4年が始まる?」という選挙=政治を語る号になった。

語り手たちは、インタビュアーである渋谷陽一をはじめ、田中秀征、東浩紀、藤原帰一、湯浅誠、孫崎享、保坂展人×小熊英二、内田樹×高橋源一郎まで、いつものメンバーに少し新しいメンバーが加わっている感じ。“いつも”の割合が多いのにもかかわらず、僕のなかになかなかスッと入ってこないのは、いかに僕が政治に対する理解力がないかという証拠である。基本的に政治も政治的なことにも、残念ながら興味があまりないのだということが、読んでいてよくわかった。

そんな中で、去年から読み始めて面白いと思っている孫崎亨の幾つかの言葉が印象的だった。

「…冷戦が終わってソ連の脅威がなくなったから、日本はもう今までのように米国追従でなくてもいいんではないかという考えが、そんなに露骨ではないんですけれども出てくるんですね。細川政権のときです。これにジョセフ・ナイが非常に危惧を示して、日本を自分たちの戦略の中にはめこむという流れを1995年、96年に作っていったわけですね…」

「…米国に言われることをそのままやるということになってしまっている。TPPもそうですよね。日本側から見てプラスのものはなにもない。だけど米国企業から見るとプラスのものがある。国益という論点じゃなくて、もうそこに乗るということだけで、今の日本の政権と経済界と官僚が動き始めた…」

「…今から見ると、一番最初に仕掛けてんのはベイカーなんですよね。日本を国際関係でもっと使っていこうっていうのを、1980年代末ぐらいに彼は言ってるんですよね…」

この路線は今後ますます強くなっていきそうだが、いろんな部分でテーマ通りに「暗黒」になってしまうとしたら、果たして4年も耐えていけるのだろうか。

日々本 第180回 針谷和昌)

hariya  2013年1月11日|ブログ