
『55歳からのハローライフ』(村上龍/幻冬舎)
5編の小説の中で誕生日が出て来たのは1ヶ所だけ。その誕生日が僕の誕生日(月日)とピッタリ一緒。ビリーという6歳で亡くなる犬の誕生日である。犬とはいえ、唯一出て来た誕生日がドンピシャで、タイトルの年齢もドンピシャ。僕が読まなければならない本であることは間違いない。
村上龍は『13歳のハローワーク』『新 13歳のハローワーク』という一種のガイド本を、同じ出版社から出している。これらの本と明らかにタイトルを関連づけていて、今回は小説だけれど55歳前後からどう働くか、どいう生きるかというお話である。誕生日が一緒だからという訳ではないのだが、ビリーの話に最も感情が動かされた。
ワークの13歳とライフの55歳。42の開きがある。その間、人は学び、働き始め、何回かの絶頂期を迎え、そして少しずつ衰え始める。僕自身も実際、55歳後半に直接的な原因が思い浮かばない腰痛が出て長引いたり、目がゴロゴロする違和感があって久々に眼科のお世話になるなど、否応無しに自覚を促されている気がする。
この42年間は長いようで短く、短いようで長い。そして42年経っても、相変わらず喜怒哀楽を繰り返している。ちっとも達観しない。ただ、13歳の頃のメンバーが集まる活動がひとつあって、そこで少しだけ、あの頃出来なかったことが出来るようになったと思うことがある。野球である。達観はしないけれど、少しだけ精神的に上達したと思える瞬間がある。ほんのちょっとの上達に42年もかかっているけれど、それを感じられた時は嬉しい。
(日々本 第178回 針谷和昌)
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