『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五○○日』(門田隆将/PHP)
タイトルは「死の淵を見た男」となっているが、内容は「死の淵を見た男たち」であり、女性もいるので「死の淵を見た人たち」である。吉田昌郎所長が「チェルノブイリ×10」と表現した危機から脱するための現場での作業と人びとを、これほどリアルに書いたものは初めてではないか。
読みながら数えきれないほど目が潤む。電車の中が多かったので、先ず眼鏡をかける。そして上を見て、そこでこらえる。何度かはそれでも少しこぼれてしまった。(いつもそうなんだけれど不思議なことに、こぼれてくるのは必ず左目の目尻から)
事故直後からの現場の人たちの働きは、事故後ずっとあった東電へのネガティブイメージを、かなりの部分払拭するほどのものである。そして、これほどの教訓を得ながら、まだ原発を動かしていくのだろうか、と改めて思う。ひとりでも多くの政治家や大企業の経営者に読んで欲しいなと思う。
(日々本 第175回 針谷和昌)
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