『あなたと共に逝きましょう』(村田喜代子/朝日文庫)
村田喜代子、先ず小説を読んでみた。「ふいの病は三十数年連れ添った夫婦の暮らしを、どのように変えるか……」の帯から、熟年夫婦の夫側が重い病気になり、それに寄り添う妻の物語というイメージが浮かぶ。
ずっと著者の本を探し、ようやく見つけたのがこの本なのだけれど、偶然の必然というのは、偶然と呼べないぐらいかなり頻繁にあるのだと思う。その日は、この帯とまったく同じ状況の夫婦が、遠くから来た二泊三日の東京観光から帰る日。その僅かな飛行機待ちの時間に会おうということになっていて、その前に入った本屋でこの本を見つけたのである。
それなりの年齢になっての病気の話なので、どこにでもあると言えばどこにでもある話。だけれども、主人公とともにこちらも初めての経験を次々と重ねていく感じで、次はどうなる?とハラハラしながら読み進んだ。とうとう一気に読んでしまう。これは著者の筆力が秀逸だからなのか、身近に同じような例があって、さらに自分にもそう遠い話ではないという意識がそうさせたのか。
次の日、著者の本をさらに4冊買った。もう1作小説を読めば、その答えがわかるはず。なぜだかここのところ、ほぼ1日1冊ペースになってきた。読み急いでいる訳ではないけれど、潜在意識の中で自分自身の 終わりの始まり を感じ始めたからなのかもしれない。
(日々本 第170回 針谷和昌)
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