へぇ~おもろいなぁ~ そう思いながら絵を読んで文章を眺めた。千葉の方から電車で帰って来たら、東京駅の南口出口がある。八重洲ブックセンターが近い。電車の中では北口の丸善へ行こうと考えていたのだけれど、せっかくなのでなかなか行けないブックセンターへ行こう。それで探している本がなければ諦めよう、そう思って南口を出た。
探している本は、ブックセンターにもなかった。検索すると「在庫なし」と出るか、該当する本は見当たりませんというような言葉が表示された。結局その後丸善にも行ってなかったのだけれど、探しているのがずいぶん前の本なので仕方ない。
お目当ての本がなかったけれど、一応1Fをグルッと回ってから出ようと店内を歩いていると、この本がバッと目に飛び込んできた。手に取ってみると、好い絵がたくさん載っている。ひさびさにブックセンターに来た記念に買ってみようか、という感じである。
『偏愛ムラタ美術館【発掘篇】』(村田喜代子/平凡社)
「かなわぬ恋文と知りつつ、絵画への想いを言葉で記す。“目利き”の小説家が注目した、知られざる名作の物語!」と帯にある。紹介されている画家は17人。最初のアルフレッド・ウォリスがとくに好い。画家にして船乗り。70歳を過ぎて奥さんに先立たれた船乗りが、そこから初めて絵を描き始めたという。
ウォリスのみならず、著者の村田喜代子に手にかかると、すべての絵が好い感じに見えてくる。芥川賞、川端康成文学賞、芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、野間文芸賞の受賞(章)者。作品がたくさんあるので、今度何か読んでみよう。いや、このシリーズの初作『偏愛ムラタ美術館』を読んで眺める方が先かなぁ。
(日々本 第168回 針谷和昌)
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