『真鶴』(川上弘美/文春文庫)
新しい本ではないけれど、川上弘美の代表作として作者紹介によく出てくるので、ずっと気になっていて、やっと読み終えた。
『神様』……………パスカル短編文学新人賞,ドゥマゴ文学賞,紫式部文学賞
『蛇を踏む』………芥川賞
『溺レる』…………伊藤整文学賞,女流文学賞
『センセイの鞄』…谷崎潤一郎賞
『真鶴』……………芸術選奨文部科学大臣賞
この本の「著者紹介」に載っている受賞歴だけれど、これで受賞作品はぜんぶ読んだことになる。前にも書いたけれど、受賞していないけれど僕は『どこから行っても遠い町』がいちばん好きだ。と、思ったら『溺レる』は読んでいないことに気がついたので、今度トライしてみる。
「まったく何もないところに文字を書き、そこに新しい世界を生み出してしまう。ものを書くというのはとてつもないことで、大変なことで、怖いことでもあるってことを、読みながら感じていた」
「そう思わせるというのは、その作家が凄いと思う」
読んだ後に、友人とそういう会話を交わした。いまパラパラと読み返してみると、1ヶ所だけ、鉛筆で線が引いてある。
…文字をいれかえて、二行めに打ちつける。
・小説など、書けやしない。現世のことに気をとられて、ここにない世のことに想像をたくましくしているゆとりなぞ、ない。…
たぶんこの辺りを読んでいて、そんなことを考えたんだと思う。文字で世界をつくることができる。ペンの力は大きい。
(日々本 第161回 針谷和昌)
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