『「自分を生んでくれた人」内村航平の母として』(内村周子/祥伝子)
「ずっと好きなことをやらせてあげた」(p35)のが息子がオリンピック金メダリストになれたひとつの答えという母親は、「赤ちゃんのころは箒の柄につかまらせたりしていました」(p47)「音を聴かせることもしました。英語や童謡のカセットテープ、それにクラシック音楽。…それに子守歌も」「本も毎日のように読み聞かせました」(p47)「右脳のトレーニングに使ったのはジグゾーパズルです」「絵を使ったイメージトレーニングも試しました」(p48)という。
子どもの教育に熱心な母親という印象だが、この本を読んでいると、そうすることで自分も楽しかったからやらせてみた、という感じが伝わってくる。そして父親は高校時代にインターハイ体操種目別のゆかと跳馬でチャンピオンになった実績の持ち主。この二人が体操教室を開き、自宅兼用の体操教室の場で遊びながら育った内村選手は、世界一の体操選手になるべくしてなった、と読み取ることもできる。
ただ、恵まれた環境にいる子どもが、その環境を活かすかどうかは、本人次第なところがある。いくら親がやらせようと思っても、本人が好きでなければ続かない。内村選手が素直であるということもその要因だと思うけれど、果たして子ども側から見た内村家がどうだったのか。そして家が彼の基礎を作ったとすると、家を出た先の進み方はどうだったのか。内村選手本人が語り尽くす本も、そろそろ出てきてもいいのではないだろうか。
(日々本 第155回 針谷和昌)
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