日々本 其の百五十一「ノーベル賞」

『「大発見」の思考法 iPS細胞vs.素粒子』(山中伸弥 益川敏英/文春新書)

科学者は楽しい。だから科学者と友達になりたいと思う。それはノーベル賞受賞者と知り合いになりたいというミーハーな理由でなく、彼らは好奇心旺盛で、ちょっといたずらっ子な感じがあって、仲良くなったらとっても楽しいと思う。

この本の著者の2人は抜群の組み合わせで、科学や科学者の面白さが増幅されて伝わってくる。こういう本は小学生や中学生に読んでほしい。科学者を目指す人が増えて、日本の未来が明るくなって行くのではないだろうか。

・益川教授は湯船から立ち上がった瞬間に思いついた。

・山中教授の実家はミシンの部品工場、益川教授の父親は戦前は家具職人、戦後は砂糖問屋だった。

・益川教授は砂糖問屋の親父にはなりたくなくて、それはマージンを乗せてモノを売るということに耐えられないという、ちょっと潔癖症なところがあったから。

・益川教授の大学時代の研究室では、助教授を「先生」と呼ばず、それは「先生」と言った瞬間に学生が自由な議論をためらってしまうから。

・山中教授は柔道を中高大(の前半)、ラグビーを大学3年間やって、今はもっぱらマラソン。考えることを止めるために走る。

・山中教授はアリに食べられる夢を見ることもある。

・山中教授はアメリカ留学で、VM=ビジョン&ハードワーク、明確なビジョンを持ちそれに向かって一生懸命努力することが研究者としての成功する条件だと教わった。

・2010年に『ネイチャー』誌が「科学者の幸福度」を調査したら、日本は最下位だったと益川教授は言う。

・研究はフェアであるということが研究の素晴らしさだと山中教授は言う。

・人間の考えることなんかよりずっと自然の方が奥深いと益川教授は言う。

・益川教授は真剣に細かい考察を積み重ねる時は机に向かい、構想を練るような時には静かすぎると集中できないので外を歩く。

・ゲームのソフトが束になってもかなわないくらい楽しいことが人間の頭の中にはつまっていると益川教授は言う。

2011年1月に第1刷が発行された本書。名前は一切出ていないが、編集者の先見の明に脱帽しながら、感謝の意を表したい。

日々本 第151回 針谷和昌)

hariya  2012年11月14日|ブログ