『美しい日本語の辞典』(小学館辞典編集部 編/小学館)
ずーっと前に買って、パラパラめくって好きなところをちょっと読んで、本棚に長らく置いてあった。改めて奥付を見ると、2006年8月の第二刷。
「美しい」というタイトルから、今度また某政党の総裁になった元首相が「美しい日本」とちょっとうわずった声で言っていた姿を思い出し、それに便乗して出したのではと調べてみると、やはり元首相が首相になる前に書いた『美しい国』という本も同じ年の7月に出ている。きっと当たっていると思う。
それで、今回は個室のお供にという感じで本棚から引っ張りだし、ここ半年ぐらい個室に置いてあったのだけれど、たまーにめくるだけで他の読みたい本を優先してしまい、結局ほとんど目を通していない。どうも手につかない理由がこの本自体にあって、たぶんそれは、タイトルの「美しい」にあるのではないだろうかと考えた。
「美しい」と自分で言っていることに対する、ある種の気恥ずかしさ。「美しい」というのは、自ら言うべき言葉ではない気がする。それが本のタイトルであっても、「美しい日本語」と決めつけられると、違うと思った場合どうしよう、という感じになる。それほど「美しい」という言葉は難しい言葉だし、「美しい」という感覚は繊細なものだと思う。最近、体操選手もよく使うけれど、「整った」とか「綺麗な」とか、もう少し使い分けた方がいいかもしれない。
(日々本 第143回 針谷和昌)
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