最初この人の作品を見たのは雑誌『pen』(阪急コミュニケーションズ)だったと思う。プロダクト、写真、広告、グラフィック、建築のクリエイティブ最前線特集だった。その中で目を惹いた透明感あるプロダクト。作者は77年カナダ生まれで早大卒のデザイナー、佐藤オオキ。へぇ、こんな人がいるんだと思って、きっとそのとき頭の片隅に入ったんだと思う。何の気なしに本屋で手に取ってみると、このデザイナーの初の著書だった。
『ネンドノカンド 脱力デザイン論』(nendo 佐藤オオキ/小学館)
「2012 Designer of the Year 二冠! 世界が注目するデザイナー」「ビー玉から高層ビルまでデザインする、nendoの世界はこうやってできていた。」と帯の前・後ろにある。本をめくっていくと、『pen』で感じたのと同じ透明感あふれる作品群。その中で「絵本の家」の写真がとくに気になった。
式根島に造った小さな住宅。独身女性の住まい 兼 島に児童図書館がないので子供たちが自由に出入りして本を読める部屋。この両方を実現した本が主役の家は、相当魅力的である。こちらが準備万端整ったら、本の宇宙がプロデュースする図書館のデザインはこの人にやってもらいたい、そう思わせられる作品だ。
まだ読書というより写真を中心に追いかけてみただけだけれど、こういうデザインが出来る人の秘密を、この本からじっくり読み取ってみようと思う。
(日々本 第138回 針谷和昌)
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