日々本 其の百三十七「チャレンジが道をひらく」

『チャレンジが道をひらく』(王貞治/PHP)

ずっと王ファンです。え?長嶋じゃないんですか?と彼らの現役時代と自らの少年時代が重なる人たちからよく言われます。僕はその都度“八時半の男”宮田征典投手と王選手のファンなんです、1965年から、と答えています。あの頃は長嶋選手のオーバーアクションが鼻につくというか(子供だからそんな言葉は知らないけれど)、格好良くなかったんですね、子供心に。というか、王選手の圧倒的なバッティング、ひたむきな姿勢が格好良かったんです。

王選手から王監督になった時、ちょっとファンを辞めたことがあります。やりたくて監督をやっているんじゃない、という発言を何かで読んだからで、それはリーダーとして言ってはいけないことではないかと思いました。王監督自体が、漫画で額に入った縦線の影を描かれてそれがトレードマークになるぐらい、明るさを失って楽しそうではありませんでした。僕がファンでなかったのはその頃だけです。

再び監督になってからは選手の頃のように明るくなって、その監督も卒業して年を追うごとに、何だか“野球国宝”のような扱いになってきました(確かに国民栄誉賞第一号ですからそう扱われてもおかしくないのですが)。変にアンタッチャブルになってしまったような部分もありますが、今の王さんからは「野球が大好き」という雰囲気が溢れ出ていて、いいなぁと思います。

そんな王さんがNHKの番組で語ったことを単行本化したのがこの本で、随所に鉛筆で線を引っぱりました。「コーチというのは言葉が大事なんです」「試合になったら、それこそ勝負ですから、もう形はどうでもいいんです」「ヒットになる確率の高い球を、待っていて打つタイプですけれど、ただ気持ちとしては常に、すごく攻撃的でありたいと思っていました」…。

この番組は福岡にあるヤフードームの中の「王貞治ベースボールミュージアム」で行われたそうで、ミュージアム内の写真が随所に使われています。このミュージアムに行かずして王ファンとは言えない。福岡に行ったら必ず寄るべき場所が出来ました。いや、このミュージアムで1日過ごすために、今度福岡へ行ってみようと思います。

日々本 第137回 針谷和昌)

hariya  2012年10月13日|ブログ