『宙の月光浴』(石川賢治/小学館)
「宙」と書いて「ソラ」、タイトルにルビがふってあって、「夜の地球は、宇宙につながっている。」と本のタイトルの上に少し小さな字で書いてある。パッと開いて出てくる見開きの写真は、夜の地球の自然のさまざまなシーン。「太陽光の465,000分の1。月光に写る聖地の宇宙。月光写真集」とタイトルと著者(カメラマン)名の下に、これはもっと小さな字で書いてある。
月光に映し出されたモニュメントバレー(アメリカ)、バオバブの木(マダガスカル)、ガラパゴス諸島(エクアドル)、イグアスの滝(ブラジル・アルゼンチン)、マンゴ国立公園(オーストラリア)、ウユニ塩湖(ボリビア)。どのページをパッと開いてみても、ある種独特の静寂感がある。その静寂は、僕が体験したあるシーンに直結する。
「夜の地球は、宇宙につながっていて、それはゾーンと同じ地平にある。」
本のコピーを借りて言うならそうなるけれど、この本に並ぶ写真を見て、僕はゾーンを直感する。時間がゆったりと流れる無音の世界。宇宙と心が完全にシンクロして、クールだけれど宇宙に自分が存在していることを実感する。
大友克洋の『AKIRA』で宇宙にまで飛び出すシーンや、リドリー・スコットの映画『ブレードランナー』でレプリカントが “I’ve seen things you people wouldn’t believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhauser gate.”と語る終盤のシーンも、ある種ゾーンと繋がる部分があるような気がする。
この写真集を眺めていたら、あの神秘的な感覚を思い出して、ゾーンに近づくことが出来るだろうか。
(日々本 第135回 針谷和昌)
※ゾーン:超集中状態。音が消え、周りの動きがスローモーションに見える。僕はこれまで3回、ゾーンに入ったことがる。最後に入ってから、もう30年以上が経つ。
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