『挑戦する脳』(茂木健一郎/集英社新書)
茂木健一郎と高校時代に同級生だったというサイエンスライター竹内薫(『宇宙のかけら』(講談社)はお薦め)が新聞の書評で、同級生のものはよほど良くなければ推薦しないけれどこれは秀逸、的なことを書いていて、その言葉を信じて久々にモギ本を読んだ(『まっくらな中での対話』(講談社文庫)以来)。竹内薫に嘘はなし。
もとは「青春と読書」という雑誌の連載で、その期間に大震災があった。なので大震災に対する茂木健一郎の考えが率直に綴られている。大震災前にも例えばこんな意見をきっぱりと書いていて、思いっきりがいい。反感は尊重されるひとつの意見ではなく単なる想像力の欠如であり怠慢である。日本人が偶有性の海に飛び込み未知の領域に挑戦することでしか今の苦境は抜け出せない。
そして震災をきっかけに、ものの見方が変わったという。さまざまな問題について現状を批判する人は、悪意があるかサボっているのかだと思っていたが、実はそんなことではなく、ただ単にできない、純然たる能力不足で、それこそが日本の今日の問題点だと確信した、という。そういう現状認識からの再出発を、茂木健一郎は始めている。
大震災を機に、さらに思いっきりの良さを加速して、またたくさんの本を書き、多くのことを唱えていくだだろう茂木健一郎は、要チェックである。これほど本を出して来ている茂木健一郎だけれど、次の一作はとくに目が離せないのではないだろうか。
(日々本 第123回 針谷和昌)
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