『エディー・ジョーンズの監督学』(大友信彦/東邦出版)
2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップ。それに向けて日本ラグビーはどんどん盛り上がり、トップリーグの観客はぐんぐん増えている、となればいいのだが、残念ながらそういう状態ではない。その逆の現象が起きてしまっているのは、去年ニュージーランドで行われた第7回ワールドカップで、日本は期待されながらも1勝も挙げることが出来なかったことに、起因していると思われる。
1987年の第1回大会から出場している日本代表は、第2回大会で初勝利を挙げたが、それが唯一の勝利。全7大会、24戦1勝2分21敗という成績。このまま日本開催を迎える訳にはいかず、満を持して臨んだ前回大会も上手く行かなかった結果、次回2015年イングランド大会では勝利を、それも複数、という課題をいま、新監督エディーが担っているのである。
そんなエディーのこれまでとこれから、日本代表監督になってからの活動を、丁寧に伝えてくれているのがこの本である。「シークエンス」「ストラクチャー」「インテンシティー」「シェイプ」など、これからのラグビーを見る上で参考になる言葉も、幾つも出てくる。トップリーグ開幕直前に出たタイムリーな本である。
エディーが今年日本代表監督になる前の2年間は、トップリーグ王者のサントリーの監督だった。日本ラグビー界にはいま2つの栄冠があり、1つはトップリーグ優勝、もう1つは日本選手権優勝である。エディーがサントリー監督になって初年度は、とにかくチームを強くすることが第一優先ということで、なかなかインタビューもしづらい部分があったけれど、1冠(日本選手権)を穫ってからの2年目には、母国オーストラリアで高校の校長先生もしていた“教育者”エディーにちなんで、『“エディケーション” エディー監督が語る世界と未来のラグビー』というインタビューをシリーズで行うことが出来た。そして2年目は見事2冠を達成し、その文句ない実績で、日本代表監督に抜擢された訳である。
僕はサントリーラグビーの魅力を世の中に伝えていく仕事をして7年目になるが、『エディケーション』も、そういう思いで始めた。始めてすぐ気がついたことがあるのだが、エディーの教育はラグビーにとどまらず、人生そのものの教育であるということだ。それがラグビーというスポーツの持つ最大の長所と、見事にリンクしている。なかなか他の競技とは比較出来ないのだが、あえて言えば“なでしこジャパン”と共通するものがあるのではないだろうか。ラグビーの良さが、もっと世の中に伝わっていくといいなと思う。
『“エディケーション” エディー監督が語る世界と未来のラグビー』
『難しくてシンプルなスポーツ』
『日本のスポーツのあり方を変えたい』
『みんなが機能し素晴らしく美しいものが生まれる』
『80分間完璧なラグビーをしたい』
(日々本 第122回 針谷和昌)
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