ベースボール・マガジン社からは、たくさんの競技の専門誌が発行されているが、この“新書”シリーズではやはり“ベースボール”という社名にふさわしく、野球の本の比率が高い。そんな中、僕が知っている限りでは、この本は『できる男は空気が読める』(高田静夫)、『サッカーがない人生なんて!』(増島みどり)に続く、3冊目の“サッカー”の本である。
『日本サッカーを救う「超戦術」』(風間八宏/ベースボール・マガジン社新書)
著者の風間さんは、1961年静岡県生まれ、清水商業高校時代にユース代表としてワールドユース(1979年)に出場、筑波大学進学後に日本代表に選ばれた。大学卒業後にドイツへ渡り、バイヤー04レバークーゼン、B.V.L08レムシャイド、アイントラハト・ブラウンシュバイクに所属。帰国してマツダ、そしてJリーグ発足後、サンフレッチェ広島でプレー。1996年に再びレムシャイドに所属し、1997年に引退した。“海外組”先駆者のひとりである。日本代表での出場は20試合。現在、筑波大学サッカー部監督、日本サッカー協会理事・技術委員、Jリーグ理事を務めている。
TV解説者としても人気の高い風間さんはこの本で、解説と同じでいろいろとズバズバ切り込んでいるのだが、なるほど~!といちばん腑に落ちた部分は、サッカーの技術に関するこんな記述である。
「ドリブルですからボールを脚でつつきますが、そのときに足首やすね周りの筋肉が使われます。実はこの筋肉は体を止めるために反応することも多く、ボールをつつくたびに無意識のうちにスピードが抑えられてしまうのです。ボールに触れる回数が多いほど『止まる』ことになり、その分、スピードに乗れなくなってしまいます」
なるほど~!だから僕はドリブルしようとすればするほど、超スローな進み方になっていくのかぁ(笑)、である。もともとヘタな上に、自分で自分にブレーキをかけていたら、そりゃあボールを奪われるわぁ。では、どうすればいいのか。その答えも風間さんはズバリと書いている。
「足とボールに強い意識がいくと、しっかりと足で蹴って(つまり「止めるための筋肉」を使って)運ぼうとします。代わりに、その意識を体に向けてみてください。体がボールに追いつく、というイメージでドリブルすると、足からよけいな力が抜け、スピードに乗ることができるのです」
僕はたまに会社に行く前、家の狭い庭でボールを蹴ることがある。この記述を読んだ翌朝、さっそくドリブルをしてみると…別人のよう!(笑)これだったのかぁ、という感動が体を走る。ちょっと大袈裟かもしれないが、そんな感覚を味わった。
「ボールがない状況で、普通に速く走ろうとすれば足にだけ意識を向けることはありませんね。ボールがあったとしても、意識はそれと同じこと。ただ走っているところにボールが当たっている、と考えられれば、無駄な力が入ることはないのです。
私はこのことを『背中でボールを運べ』と表現しています」
このペースで、全篇、具体的な技術論や戦術論が展開されている。サッカーを“やる”人にも“見る”人にもお薦め。僕は自分で読んだ本を、そのまま『サッカー 本の宇宙』に並べて、明日やってくる風間さんを待っている。
(文・社団法人 本の宇宙)2010.05.24
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